中東危機も国際社会の動向を無視したトランプ大統領の言動によって深刻化しかねない。エルサレム首都宣言は、イスラム社会だけでなく、欧州、中国、ロシアからも反発され、同盟国である日本にも反対された。親米のサウジアラビアも困惑している。中東和平がさらに遠のくだけでなく、中東における米国の影響力にも響くだろう。トランプ大統領はまたイランをめぐる国際的な核合意を批判し続け、反政府デモをあえて強く支持している。反イランの姿勢を鮮明にすることで、中東の緊張を高めるだけでなく、ロシア、中国、欧州各国との対立を招いている。

 トランプ大統領はすでに、地球温暖化防止のためのパリ協定からの離脱を打ち出したほか、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱など、国際合意を次々に破ってきた。そんなトランプ・リスクはこれからは、北朝鮮、中東という地政学リスクに焦点が移ることになる。それは世界の危機に直結することになりかねない。

所得格差が広げるポピュリズム

 「政低」は米国のトランプ政権だけではない。トランプ・リスクによるパワーの空白を埋めようとするのは、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領ら「強権」政治家である。そして、何よりトランプ流にみられるポピュリズムが世界の潮流になってしまった。

 それは英国の欧州連合(EU)離脱の国民投票に始まった。難民問題を背景にしたEU内の極右ポピュリズムの台頭も無視できない。仏大統領選挙では極右「国民戦線」を封じ込めたが、ドイツでは2017年9月の総選挙で、極右「ドイツのための選択肢」(AfD)が初めて議席を獲得した。さらにオーストリアでは極右勢力が政権入りした。旧東欧圏では、難民受け入れに拒否反応が強く、EUの大原則である「法の支配」が揺らいでいる。EU内で東西亀裂が深まる恐れもある。

 ポピュリズムについては、民主主義の一形態であり、その主張が改革に取り入れられれば、効果はあるという肯定的なとらえ方も一部にある。極右ポピュリズム政党には、国民に受け入れやすくするため極端な排他主義は避けるといった戦略が目立つようになっている。その変化をみて、あえて「極右」とは呼ばず、「右翼」と呼ぶメディアもあるほどだ。しかし、そうして国民の間に主張を浸透させることこそが極右ポピュリズムの狙いなのである。その危険な本質を見抜かないと、いつの間にか極右ポピュリズムに無感覚になり、世界に危機の連鎖を招きかねない。

 では、なぜ極右ポピュリズムは浸透するのか。グローバル化が広がれば広がるほど、地域主義や地元意識が高まるのは事実だろう。そこにはグローバル化や技術革新など大きな変化についていけない「取り残された人々」がいる。「昔は良かった」と感じている人たちもいる。高齢化が進めば、「昔は良かった」症候群はさらに広がるだろう。

 しかし、ポピュリズムが人々の感情に付け入るのは、そこに抜きがたい所得格差があるからである。所得格差は、先進国か新興国かを問わず、あるいは政治体制の違いを問わず、世界中に拡大している。

金融資本主義の肥大化が生む所得格差

 所得格差が広がるのはなぜか。急速なグローバル化やデジタル革命など技術革新による面があるのはたしかだろう。しかし、何より実物資本主義に比べて金融資本主義が肥大化してしまったからだろう。