トランプ大統領と習近平国家主席は再び手を取り合えるのか(写真:ロイター/アフロ)
トランプ大統領と習近平国家主席は再び手を取り合えるのか(写真:ロイター/アフロ)

 「勝者総取り」がもてはやされ、優越的地位の乱用が許されるなら、健全な資本主義は機能しない。技術革新の芽も摘み取られる。G20各国の独禁政策の強化が必須である。さらに「グローバル独禁法」の制定を軸に、グローバル経済に見合った国際的な法体系の整備が必要になる。

 英仏で導入されたデジタル課税をG20全体に広げるときでもある。金融資本主義の肥大化に対応した金融取引税も導入していい。富裕税導入、所得税の累進制強化、相続税の強化なども必要だ。

 資本主義をいま鍛え直さなければ、ポピュリズムを蔓延させる。政治危機が、資本主義と民主主義の連鎖危機を招くだろう。

共倒れ招く覇権争い

 核危機、地球温暖化の危機、難民危機、そして格差拡大による資本主義の危機など深刻な「地球の危機」に比べれば、米中間の覇権争いは小さくみえる。

 もちろん習近平政権の「中国製造2025」にみる国家資本主義によるハイテク戦略に、米国が神経をとがらせるのはわかる。巨額の産業補助金で打撃を受ければ、相殺関税の対象になるというのが世界貿易機関(WTO)のルールでもある。

 しかし、中国のハイテク戦略はほとんどすべてが米国など先進国のキャッチアップ(後追い)である。中国発の独自技術は少ない。キャッチアップを達成したと思ったら、先進国は次の段階に踏み出しているはずだ。

 歴史的にみて覇権国に挑戦する国がほとんど「敗退」する。覇権国を乗り越えようとする過大な挑戦のコストの重さに耐えられなくなるからだ。

 米中はこれまで築いてきた「相互依存」関係を分断すべきではない。それは米中共倒れの道である。世界経済を混乱に陥れる。むしろ、この相互依存関係を生かしてハイテク技術を人類と地球のために「共同開発」することこそ求められる。G20をそんな新たな協力の場にしなければならない。

日本の「地球責任」は重い

 「地球の危機」を防ぐうえで、日本の責任は重大だ。アジアで唯一のG7参加国である。そして唯一の戦争被爆国である。その日本がG20の議長国になったのである。

 安倍首相はG20を通じて「地球の危機」をどう防ぐかその道筋を示さなければならない。「新冷戦」の時代だから仕方がないとそれに身を任せるのではなく、「新冷戦」を超えて「地球の危機」打開の先頭に立つことが求められる。少なくとも「地球の危機」に覇権争いをする愚かさを米中に気付かせれば、その意義は大きい。それは回り道にみえて、新冷戦を防ぐ近道でもある。

(写真:ロイター/アフロ)
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