必要なのは、技術革新をテコにした価値観の変革

夏野:確かに、歴史上の大きな変換点には、いつも技術変革があったように思えます。しかし、「技術が国の将来を決める」という人達には、私はあまり賛同しません。私は、「新しい技術に適応した社会を作る」ことこそが、もっと重要だと思っています。新しい技術を開発した人は偉いけれど、それを受け入れて社会を変革した人はもっと偉いと思います。逆に言うと、その重要性に気が付かずに無視したり、邪魔をしたりする人は最低です。

松本:本当です。信じられないほど「技術革新」に鈍感な人達を、私もこれまでにたくさん見てきました。これからダイナミックに進む「AIの導入」となると、頭の固い人達はその価値がなかなか理解できず、相当抵抗されることも十分予想されます。人間は、自分が理解できないと、「マイナス面に対する心配」や「漠然たる不安」だけに支配されて、「事なかれ主義」に陥りがちです。これが、私にとっては、当面最も心配なことです。

夏野:自分が変わりたくない人は変わらなくてもいいですよ。それは責めません。しかし、邪魔はしないでほしいですね。自分が古い価値観から抜け出せないのはいいけれど、これから伸びていく若い人達や子供達には、新しい価値基準をどんどん与えていってほしいと思います。「技術革新」をそこだけで止めず、「価値観の変革」へと転換させていくことこそが必要で、AIはまさにこの試金石とも言えるのではないでしょうか?

松本:賛成です。老いも若きも、文科系も理科系も、すべての日本人が「AIでは、今度こそ世界をリードする。決して過去の過ちを繰り返さない」と強く心に誓うことが、まずは第一歩だと思います。そのために必要な「新しい価値観」の創造に向けて、お互いに頑張りましょう。