私は、安倍政権による憲法解釈の変更と安全保障法制の制定を必ずしも否定していません。安倍首相でなかったら、安全保障法制を実現することはできなかったでしょう。しかし、安倍首相だったからこそ、大きな喧噪と混迷を生み出した。集団的自衛権の行使を違憲とする左派だけでなく、一般の人々の中にまで「やりすぎだ」と思わせてしまいました。

 例えば、集団的自衛権を行使する例として、ホルムズ海峡の機雷除去を挙げました。あれは、適切ではありません。日本の存立とは直接関係ない出来事への対処、それこそ地球の裏側まで武力行使を目的に自衛隊を派遣するような印象を与えてしまった。

 集団的自衛権の行使は、我が国周辺の有事くらいにとどめるべきでしょう。内閣法制局長官を務めたある人物も「新三要件は、自衛権へのしばりとして積極的に評価したい。しかし、ホルムズ海峡を持ち出すと、しばっているのか緩めているのか疑わしくなる」と話していました。

憲法に「自衛隊」を明記しない場合、文民統制はどのように担保しますか。

長島:防衛に関する規定が憲法にない現在でも、文民統制は維持できています。例えば、首相が「自衛隊の最高の指揮監督権を有する」ことが自衛隊法に定められています。防衛出動する際には「国会の承認」を得るとの規定もあります。

 ただし、「国会の承認」を憲法の条項に格上げすることを積極的に考えてよいでしょう。ドイツでは国軍を「議会の軍隊」と呼びます。すなわち「国民の軍」であると憲法で明確に位置づけています。国民が議会を通じてコントロールする軍という意味ですね。ヒトラーの時代は、軍が統治者の下にありました。ここから生まれた教訓です。軍が統治を簒奪した経験を持つ日本もこの考えを取り入れるのがよいかもしれません。

国民と公明党の理解を得る

長島さんは先日、自民党の石破茂さんと対談されました。石破さんは、大雑把に言えば自民党が2012年に発表した改憲案と同じ案を提示した。長島さんはそれを「オーソドックス」な考えと評されました。オーソドックス案と長島案との優劣をどう評価しますか。

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。

②前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

第9条の2 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
②国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

③国防軍は、第1項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。

④前2項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。

⑤国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。