とはいえ、安倍政権の憲法解釈も、従来の解釈とそれほど大きくずれているわけではありません。9条は「その文言からすると、国際関係における『武力の行使』を一切禁じているように見える」と認めています。これは憲法学界の通説と完全に一致しています。

13条が、9条の例外を規定している

 自衛隊が認められる根拠は、9条の例外を13条が規定しているからです。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 外国から侵略を受けた時にそれを放置して国民の生命が奪われるに任せることは、この13条に違反することになります。そこで政府は、13条の要請を実現するために必要な自衛のための必要最小限度の実力は、9条がいう「戦力」には含まれないと解釈しているのです。

自衛隊が持つ装備は、外国の軍隊と遜色ないといわれます。これを戦力ではなく「自衛のための実力」とする解釈は詭弁の観があります。これを解消するための改憲は必要ありませんか。

木村:それは歯科医が虫歯治療のため歯を削る行為をどう解釈するのかと同じではないでしょうか。刑法204条は「傷害」について定めています

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 歯科医が虫歯治療のために歯を削る行為はこの条文に照らせば傷害に当たります。一方、刑法35条は204条の例外を認めています。

第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

 この規定により歯科医の行為が罰せられることはありません。

 この時、2通りの解釈が可能です。1つは、歯科医が歯を削る行為も「傷害」の一種だ。しかし35条により例外として罰しない(A)。もう1つは、歯科医が歯を削る行為は正当業務なので、「傷害」という概念はそれを含まないものと解釈すべきだ(B)。どちらでも「罰せられない」という結論は同じです。

 (A)の解釈のほうが森さんの好みに合うということでしょう。

そうですね、すっきりします。

木村:政府は自衛隊について(B)のような解釈を採用しているわけです。ただ、2014年7月の閣議決定*では、「憲法第9条の下で例外的に許容される『武力の行使』」という表現も使っています。歯科医のケースと同様、どちらでも結論は同じです。どちらを選ぶかは趣味の問題。

*:安倍政権が集団的自衛権の限定行使容認を明らかにした閣議決定