2項についても、かねて問題点を指摘されていますね。

石破:そうです。まず、「その他の戦力」とはなんでしょう。これは陸海空軍のような正式な戦力ではないが、それに類するものです。あえて言えば、「ヒットラーユーゲント」(ヒットラーが青少年を中心に組織した武力集団)のような準軍隊的なイメージでしょうか。

 「交戦権」というのは、国家は戦争時に人を傷つけても傷害罪にならず、ものを壊しても器物損壊罪にならない。そして、兵士が捕虜になったらきちんと捕虜としての処遇を受ける、そうした諸々を含むものだといいます。

 一方、2項には「芦田修正」と呼ばれるものがあります。終戦直後に憲法改正特別委員会委員長になられた芦田均先生(のち首相)が改正草案に加えられたものです。先ほどの1項で規定しているのは、「国際紛争を解決する手段」としての戦争や武力行使であり、それはしないとしています。そして2項では当初、「陸海空軍その他の戦力は有しない。国の交戦権は認めない」という案になっていたのですが、その前に「この目的を達するために」という言葉を入れたのです。

 これによって自衛のためであれば、戦力を保持することは可能であるという解釈が導き出せることになります。しかし、政府はこれまで、この芦田修正の立場をとっていません。2項を全面的な戦力不保持と解しています。ただ、国家には本来自衛権があるとして、自衛隊を保持しているのです。

 自衛隊を「戦力」といわず、「自衛力」と説明しているのはこのためです。しかし、自衛隊の憲法上の存在をあいまいなままにしている元凶と思います。だから、私は改正するなら2項も変えるか削除すべきだと思っています。

国民の95%は自衛隊容認、理解して貰える

安倍首相は、9条に3項として自衛隊を明記したいとしています。存在を書くだけなら、現状と変わらないのではと受け止める向きが多いかと思いますが、そうではないと。

石破:総理がどのような文言を入れようと考えておられるかは分かりません。が、例えば「国の独立並びに国際平和を維持するため、陸海空の自衛隊を保持する」と書くとします。そうすると、「陸海空軍その他の戦力は有しない。国の交戦権は認めない」としている2項とどうつながるのですか。そこが私にはよく分かりません。

自民党は2012年に党としての憲法改正草案を作成しています。そこには自衛権の明記や国防軍の保持を盛り込んでいます。

石破:憲法改正を提議するなら、自民党としてこの草案をなぜ掲げないのかと思います。草案の策定には私も関わりましたが、9条の2項を変えようということに異を唱えた議員はいなかったと記憶しています。

 今、世論調査では国民の95%が自衛隊は合憲だといっています。だから自衛隊を憲法の中にしっかりと位置づけることに反対する人はいないでしょう。私も当然、賛成です。

 政府もこれまで一貫して自衛隊は合憲であるとしてきました。であれば、なぜ2項との“矛盾”を固定化するような改正をするのでしょう。

「戦力を不保持、交戦権を認めない」とした2項を変えることは、国民の理解が得にくいし、加憲までしか容認しない公明党への配慮もある、ということでしょう。

石破:95%の人が自衛隊を認めている中で、3項を入れるだけではない(2項の削除・改正を含む)改正は、そんなに国民に受け入れられない話なのでしょうか。もっとしっかりと説得して理を尽くしていけば分かって貰えるのではないでしょうか。少なくともその努力は続けるべきです。