ヒトラーを出現させないために

自民党改憲本部の現行案は関連して、国会議員の任期についての規定も提案しています。

国会議員の任期特例等に係る規定案

第○条
大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、あらかじめ法律で定めるところにより、内閣の要請に基づき、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、(○月を超えない範囲内において、)その任期及び選挙期日の特例を定めることができる。

 議員の任期を延長するなら立法府は機能するわけですから、緊急事態条項を設け、政府に大きな権限を与える必要はないのではありませんか。

西:どんな法律でも、それを定めるには時間がかかります。緊急事態条項は迅速に対応することを重視しています。もし衆議院や参議院がそれぞれ、あるいは同時に選挙期間中にある時に緊急事態が生じた場合、国会として何らの対応もとれません。かといって、憲法に定められている任期を下位法たる法律で延長することはできません。それゆえ憲法で任期延長を規定することは合理性があります。外国の憲法にはこのような規定があります。

第一次世界大戦後、ヒトラーがドイツで、緊急事態条項を利用して独裁体制を敷いた先例があり、国民の間に不信感があります。

西:おっしゃるとおりです。なので、緊急事態条項を導入する際に重要なのは憲法秩序を守ることです。憲法そのものを壊してはなりません。

 先ほど申し上げたように、緊急事態を想定して、政府の行動について事前に決まりを設けておくことが憲法秩序を守ることにつながる面もあります。超憲法的な措置を許してはいけません。自民党改憲本部の現行案は、政令について事後の国会の承認を義務付けています。これは適切な措置と考えます。

 ちなみに現在のドイツ基本法は国民に抵抗権を与えています。政府が憲法秩序を破壊するような行為に及んだ場合、国民は抵抗する権利があると定めているのです。ナチスの独裁に対する教訓から生まれた規定ですね。