
「国民と協力して」は非常事態を想定
いよいよ最後の案です。これは、自民党が2010年に提示した改憲案ですね。「国防軍」を設置するとしています。
- 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
- 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
- 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
- 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
- 国防軍は、第1項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
- 前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制、及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
- 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。
この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。
木村:これは第6案と実質的に同じです。フルスペックの軍事活動ができるとしています。名称を「自衛隊」ではなく「国防軍」としているのが違いです。
この案は自衛隊の役割に「公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動」とあります。他の案にはないものです。これは何を意図したものでしょう。
木村:治安活動ですね。例えばテロ対策とか、警察の手に余る事態に対処する。軍事行動の相手は国です。これに対して、治安活動の相手は国ではなく、凶悪な犯罪者やテロリストが想定されます。
9条の3は領土、領海、領空の保全をうたっています。尖閣諸島の現状を考えると、この点を明示するのは時宜にかなったものに読めます。
木村:この条文に関する懸念は「国民と協力して」の部分にあります。国民を強制的に徴集することを正当化しかねないからです。憲法が国民の権利に対して与えている保障を解除することにつながる恐れがあるわけです。
非常事態宣言を想定している。
木村:はい、非常事態の際に国民に物資の提供を求めたり、直接の軍事活動ではない活動に国民を携わらせたりすることが想定されます。
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