
2項削除と事実上同じ
五つ目の案(第5案)に進みます。
前2項の規定は、国の自衛権の行使を妨げず、そのための実力組織を保持することができる
これは、集団的自衛権を行使する組織を定めていますね。
木村:はい。しかし、その性質や動かし方には触れていません。問題を解決したことにはなりません。
集団的自衛権も行使し得る実力組織というと、行政機関ではなく軍隊ということになりますね。2項削除と事実上同じということになりませんか。
木村:そう解することもできると思います。
「国の個別的自衛権の行使を妨げず、そのための実力組織を保持することができる」とすれば、意味も明確ですし、9条2項の趣旨も踏襲することができます。ただし、限定的な集団的自衛権行使を容認した安保法制との矛盾が生じてしまいます。この点は第4案と同様です。
100年前の不戦条約の議論を学び直せ
ここからは、現行の9条を削除し、新たな9条を置く案です。その第1は以下の通りです(第6案)。
- 日本国民は、正義と秩序を基調とする平和を誠実に希求し、侵略の手段としての武力による威嚇及び武力の行使を永久に放棄することを、厳粛に宣言する
- 我が国の独立と平和及び国民の安全と自由並びに国際社会の平和と安定を確保するため、陸海空自衛隊を保持する
- 自衛隊は法律の定めるところにより、その予算、編成、行動等において国会の統制に服する
- 自衛隊の最高指揮官は、内閣総理大臣とする
第6案における9条1項は、現行の9条1項の内容を変えることなく、分かりやすい表現にしたように読めます。この部分は評価できるのではないでしょうか。現行9条1項は不戦条約*に関する知識がないと、読んでも意味が分かりません(関連記事「なぜ9条の政府解釈はモヤモヤしているのか」)。「侵略戦争を放棄する」と書かれれば、すぐに意味が分かります。
- 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
締約国は、国際紛争解決のため、戦争に訴えないこととし、かつ、その相互関係において、国家の政策の手段としての戦争を放棄することを、その各自の人民の名において厳粛に宣言する。
Powered by リゾーム?