
「行政機関」と明示すれば安保法制と矛盾
ここから、有力案以外の案についてお伺いします。 自民党の憲法改正推進本部は、9条2項を維持する5つと、同項を削除する2案を提示しました。有力案は、この5つのうちの1つです。 9条2項を維持する2つ目の案(第2案)についてうかがいます。
前条の範囲内で行政各部の一として自衛隊を保持する
この案は、自衛隊が行政機関であることを明確にしていますね。
木村:確かに。しかし、それゆえの問題があります。安保法制が合憲かどうかがさらに怪しくなってしまうからです。
安保法制が認める限定的な集団的自衛権行使は、行政を超えた軍事の範疇に入ります。自衛隊が行政機関であることを前提にするならば、自衛隊は集団的自衛権を行使することができないと考えるのが自然です。2015年に行なわれた安保法制をめぐる審議の中でも、「自衛隊の活動は行政の域を超えられない」というのは安倍政権が答弁に窮する論点の一つでした。
9条2項を維持する3つ目の案(第3案)についてうかがいます。
前条の規定は自衛隊を保持することを妨げない
第2案が「自衛隊を保持する」としていたのに対し、こちらは「保持することを妨げない」としています。法律的にはどのような意味の違いがあるのですか。
木村:「保持する」とすると、保持しなければならないという意味が強くなります。仮に将来、世界平和が訪れて自衛隊が不要になっても、縮小や廃止が困難になります。また、自衛隊がいらないくらいに平和な国際社会を目指すのだ、という9条の理想も曖昧になります。一方、「保持することを妨げない」とすれば、縮小も廃止も可能です。長期的な視点に立つならば、「保持することを妨げない」とするほうが好ましいでしょう。
ただし、この案は自衛隊が何をする組織なのか、有力案以上に分かりません。
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