日本上空を通過した火星12号(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

自衛隊法に「破壊措置命令」が定められています。これで対応することはできませんか。

弾道ミサイル等に対する破壊措置

 第八十二条の三  防衛大臣は、弾道ミサイル等(弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう。以下同じ。)が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。

香田:破壊措置命令は、確かに「弾道ミサイル等」を打ち落とすことを認めています。しかし、想定しているのは、北朝鮮がミサイル実験をした時に何らかトラブルが起こり、我が国に破片が落ちてくるような事態です。

 これは防衛行動ではありません。相手国の武力行使ではない行為(発射実験等)が不首尾に終わった結果生ずる落下物を「結果的に打ち落とせればよい」と考えた官僚的発想の結果に過ぎない。現実には、組織的な武力行使ではないと解釈されることもあり得る相手国の弾道弾の単発攻撃はこの規定で対処するしかないと考えます。

 こうした対処の仕方はある意味で危険です。破壊措置命令が出たままになっていれば、それを悪用してオーバーリアクションもできる。

戦前・戦中に「自衛」を乱用したことが思い出されます。

香田:そうですね。なので、政府、我が国の国民がしっかりと自衛隊をコントロールするという意味で防衛出動を発令すべきです。逆に言えば、防衛出動は、自衛隊が武力を行使して我が国を防衛するということだけではなく、わが国民の意志の発露であり、国民が自らの意思で自衛隊をコントロールするという政治的な意味もあるのです。

 相手の国が撃ったものを撃ち落とすわけだから、それは国家意思の明確な発動です。防衛組織である自衛隊の防衛能力を、国家として我が国の防衛のために発揮する。そのために、国民の意思として自衛隊に防衛出動を発令して対処する。そうでないとおかしいでしょう。

 「破壊措置命令でミサイル攻撃に対処せよ」と自衛隊に命じるのは、ダイコンを切るような気軽さ(国家と国民の意思を発動した防衛出動ではない破壊措置命令)で、人(相手国の弾道弾)を切れと言っているようなものです。そんなことは、法治国家、成熟した民主主義国であってはならないことは当然です。