「このようなケースで現代の国連PKOは、武力を行使してでもこの人物を助ける。一方、自衛隊はこのケースで『中立』を維持するために、助けることはできない」(同)。「PKO参加5原則」が「③当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること」と定めているからだ。「それゆえ、世界で16の国連PKOが実施されているにもかかわらず、現時点で自衛隊部隊の参加はゼロにとどまっている」(同)

PKO参加5原則

①紛争当事者の間で停戦合意が成立していること

②国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。

③当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること

④上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること。

⑤武器の使用は、要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能。

大野元裕(おおの・もとひろ)
民進党の参議院議員。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。国際大学国際関係学修士課程を修了(中東地域研究専攻)。外務省の書記官、調査員としてイラク、UAE(アラブ首長国連邦)、カタールなど中東諸国に赴任。中東調査会や日本エネルギー経済研究所などのシンクタンクで研究員を務める。東京大学教養学部および青山学院大学大学院などで非常勤講師を歴任。2010年、埼玉県で参議院議員に初当選。2012年に防衛大臣政務官。(撮影:加藤康)

 大野案の4項にあるように「『人道的な見地から行われる』かつ『必要最小限度』の武力行使を認めることで、こうした状況を解消し、憲法前文が定める『全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する』世界の構築に貢献できる」(同)

 5項は(C)国連が主導する「集団安全保障」への参加を規定する条項だ。「国連憲章42条が定める集団安全保障が実現し、国連軍が形成される事態を想定したもの。この場合は、国連の加盟国として自衛隊を供出できるようにする。ただし、自衛隊はあくまで国連軍の一部として、国連の指揮の下で活動する。日本が主権国家として武力を行使するのとは異なる次元の話だ」(同)

 「今のところ、国連軍の形成は考えづらいのが現実。しかし、憲法は視点を長期に置くべき。日本はその安全を国連軍に依存する可能性がある。ならば『国連が主導する集団安全保障に日本が何の関与もしない』という理屈は成り立たないのではないか」(同)

集団安全保障への参加をめぐる是非

 「『自衛隊』ではなく『自衛権』を憲法に定める」の回で紹介した国際政治学者の篠田英朗・東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授も、集団安全保障を重視する(関連記事「『9条は全面削除しても何の支障もない』」)。篠田氏は「現行の9条も集団安全保障への貢献を制限していない」と解釈する。ただし、これが合憲であることを明示するため、以下の文言を9条3項として挿入することを提案している。

篠田氏が提案する 9条3項
第2項の規定は、本条の目的に沿った軍隊を含む組織の活動を禁止しない。

 本条の目的とは「二度と侵略国になることなく、国際法を遵守し、国際協調主義に則って行動すること」。先に触れたように、集団安全保障への参加は「国際法」である国連憲章に則った行動であり、「国際協調主義」に沿っている。