「非戦闘地域」の考えは新たな神学論争を生んだ。イラク戦争の後、小泉純一郎首相(当時)の発言が騒動のタネとなったのは記憶に新しいところだ。同国の復興を支援するためのイラク復興支援特別措置法をめぐる議論が2003年に交わされる中で、「どこが非戦闘地域なのか、私に聞かれても分かるはずない」「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域だ」と発言した。

 武力行使を目的としないPKO(B)についても、「PKO参加5原則」が国連の原則と合致しておらず、参加への扉を実質的に閉ざしているのが現状だ(後述)。

国際貢献を憲法に定める

 民進党の大野元裕・参議院議員は、国際貢献が政府の役割であることを憲法に明記するため、「条約順守」を定めた98条の後ろに以下を追加するよう提案している(関連記事「あの石橋湛山も重視した集団安全保障を憲法に」)。

日本国は、国際連合を中心とした国際平和のための取り組みへの寄与その他の国際協力の推進を通じ、国際社会の平和及び安全の確保に積極的に貢献するものとする。

②際連合安全保障理事会が国際の平和及び安全に必要な活動として加盟国に対し武力の行使を容認する趣旨が明らかである決議を行った場合においては、当該決議に基づく活動の内それ自体が直接の武力行使に当たらない活動に限り、法律の定めるところにより、これに参加し又は協力することができる

③際連合その他の我が国が加盟する普遍的国際機関によって実施され又は要請される国際の平和及び安全の維持のために行われる武力の行使を目的としない活動であって国際法規に基づいて行われるものについては、法律の定めるところにより、これに参加し又は協力することができる

④前二項の規定による参加又は協力に関わる活動は、法律の定めるところにより実施し、それ自体が直接の武力の行使に当たらない活動が、他の者の武力の行使と一体のものとなると認められるときであっても、法律の定めるところにより、当該活動が人道的な見地から行われるものであって、且つ必要最小限度にとどまる場合には、これを行うことができる。

⑤国際連合憲章第四十二条に基づく集団安全保障措置が講じられる場合には、我が国の国権の発動として行われるものでない場合に限り、これに参加することができる。

 大野氏が提案する2項は、武力行使を目的とする国連の活動(冒頭で提示したA)を想定した規定。例えば湾岸戦争の時に組成された多国籍軍がこれに当たる。「『武力の行使を容認する趣旨が明らか』な『国連安保理決議』を要件とすることで、国連が主導する活動であっても、正統性の強いものに参加・協力を限定する」(大野氏)

 3項は武力行使を目的としない国連もしくは国際機関による活動、例えば各種PKOへの協力(同B)を想定した条項だ。2項、3項ともに、武力行使に当たらない限り、参加・協力できると定める。

中立性における国連のスタンダード

 ユニークなのは4項だ。「2項と3項が想定するケースに自衛隊を派遣した時に、現地の状況が変わり、武力行使に巻き込まれることが考えられる。この場合、後で紹介する二つの要件を満たした場合には武力行使を容認する。この規定により自衛隊は、例えば、さまざまなPKOにこれまで以上に積極的に参加し、国際社会に貢献することが可能になる」(大野氏)

 「PKOの現場で、当初の目的に反して武力を行使せざるを得なくなるのは、次のようなケースだ。部族AとBが対立し紛争が生じている。その紛争地域において死に直面する人が倒れている。この人物を助けることは部族Aを利することになるかもしれない」(同)