(前回はこちら)

集団的自衛権の行使に比べて関心が集まっていないものの、改憲を議論する際に無視できないのが国際貢献だ。具体的には、(A)国連が主導する多国籍軍への協力、(B)PKO(平和維持活動)への協力、(C)国連が主導する「集団安全保障」への参加、をどう位置づけるかである。集団安全保障は、加盟国が集団でつくり、加盟国すべてを適用対象とする安全保障体制のこと。侵略などをした国に対し、他の加盟国が国連安全保障理事会決議に基づいて集団で制裁を加える。集団的自衛権と字面が似ているが、異なる概念だ。
日本国憲法は前文で以下のように宣言し、国際貢献を重視している。
日本国憲法 前文
(前略)
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
新たな神学論争「武力行使との一体化」
だが、この宣言を実現するための権能や方法については憲法に規定がない。このため、自衛隊を海外に派遣し国際協力案件に参加する話が持ち上がるたびに、憲法との関係が議論されてきた。
(A)と(B)について、自衛隊の海外派遣をめぐる議論は1990年の湾岸戦争をきっかけに始まった。政府は多国籍軍への後方支援を実施するため「国連平和協力法案」を国会に提出。この時、「わが国の自衛隊は、自衛のため必要最小限度の武力行使しかできない。交戦権も持ち得ない。海外派兵もできない」という当時の政府見解との整合性が問題視された。政府はこれに対し、他国による「武力の行使と一体化することがない後方支援ならば許される」と説明した。
同法案は結局、廃案になった。だが、この説明をベースに、「非戦闘地域」での活動は他国による武力行使と一体化しない、との考えが生まれた。非戦闘地域の定義は、①現に戦闘が行われておらず、②自衛隊の活動期間を通じて戦闘行為が行われないと認められる地域である。
Powered by リゾーム?