2014閣議決定に対する強い不信

 山尾氏が行政、立法、司法からの統制に注目するのは、「9条に関連して大切なのは、国民意思で『自衛権』に歯止めをかけること」と考えるからだ。「私の考える憲法議論は、立憲主義を貫徹し、その価値を強化する『立憲的改憲論』」(山尾氏)と語る。

 この考えの背景には2014年の閣議決定とそれに続く安保法制をめぐる議論への不信がある。「日本は自衛権を、憲法に明文化されていない様々な解釈・不文律・規範を通じて統制してきた。私たちは、そのスキを安倍政権に突かれてしまった」(山尾氏)。明文化されていない統制とは、具体的には「専守防衛に徹し、集団的自衛権は行使できない、という憲法9条の解釈」や「内閣法制局の人事に首相は関与しないという不文律」を指す。

 前出の青井氏も同様の不信を抱く。「安倍政権が意図する方向の改憲、すなわち、自衛隊の位置づけを一般の軍隊にさらに近づける改憲を議論できる時とは思えない。近時の例でいえば、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題をめぐって、自衛隊という実力組織を政府や議会が適切に管理・統制できていない実態が明らかになった」

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