④「安倍政権は憲法を『たたき壊した』」

社民党の福島瑞穂・参議院議員(写真:加藤 康)

 社民党の福島瑞穂・参議院議員も、山尾氏と同様に集団的自衛権の行使を認めない。ただし、現行9条に手を入れることなく維持する案を主張する(表の④)(関連記事:「安倍政権の「憲法クーデター」を許すな」)。

福島氏が提案する改憲案

 現行の9条を維持する

 9条に対する1972年見解の下、「海外での武力行使、集団的自衛権の行使は禁止されている(関連記事:「なぜ9条の政府解釈はモヤモヤしているのか」)。9条があることで、戦後、武器輸出の禁止、非核3原則を確立してきた。これらに規範力があるゆえ、かつての政権が朝鮮戦争やベトナム戦争に参戦したい、米国に対してええ格好したいと意図しても、これを妨ぐことができた。自衛隊が異国で人を殺したこともないし、自衛隊員が異国で殺されたこともない。これは非常に大事なこと。日本はもっとアピールしてよい」 (福島氏)

 9条の解釈は、2014年の閣議決定により、集団的自衛権の限定行使を容認するものになった。したがって、9条を維持しても、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」とした72年見解の解釈に戻すことはできない。それでも同氏が現行9条の文言にこだわるのは、安倍首相に対する不信感が強いからだ。

 「安倍政権は9条の解釈をねじ曲げて、ダリの絵に描かれた時計のように歪めた。憲法を『たたき壊した』と言っても過言ではない。そして、14年閣議決定による新たな解釈に則って、安保法制を作った。一連の流れの中で、9条の下で何ができて、何ができないか、が分からなくなってしまった。この状態を放置したまま9条の条文を改めれば、さらなる混乱が避けられない」

⑤「現行9条でも集団的自衛権の行使は可能」

東京外国語大学大学院の篠田英朗・総合国際学研究院教授(写真:加藤 康)

 ここで、東京外国語大学大学院の篠田英朗・総合国際学研究院教授の意見を紹介する(表の⑤)(関連記事「『9条は全面削除しても何の支障もない』」)。同氏は、長島、三浦の両氏と同様に、集団的自衛権の行使を認めるべきと考える。それも、9条を「現行のまま維持」 した状態で可能だという。「改憲論」ではないが、ユニークなのでここで紹介したい。

 篠田氏の9条解釈は、政府の72年見解と趣を大きく異にする。2014年の閣議決定解釈とも異なる。「憲法起草の目的は、日本が二度と侵略国になることなく、国際法を遵守し、国際協調主義に基づいて行動する国にすること。この意図と国際法に鑑みて日本国憲法を解釈すれば、下記の解釈になる」(篠田氏)

篠田氏による日本国憲法9条の解釈
  • 1)9条1項は戦争放棄
  •  (国連加盟国のすべてが侵略戦争を放棄している=国連憲章2条4項。日本国憲法に特別のことではない)
  •  放棄した「戦争」に、集団安全保障と自衛権の行使に基づく武力行使は含まれない
  • 2)9条2項は、集団安全保障と自衛権の行使に用いる戦力を否認しない
  • 3)交戦権の放棄は、戦争放棄を改めて宣言したもの

 1項の解釈は政府の72年見解と同じだ(関連記事:「なぜ9条の政府解釈はモヤモヤしているのか」)。しかし「第2項にある『陸海空軍その他の戦力』」は、1項で放棄した『戦争』を実行するための戦力を指す」という。

 2項について。「日本語の条文を読むと、1項にある『戦争』と2項にある『戦力』のつながりが不明確だが、英文で読むとはっきりしている。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が出した憲法草案は、1項の『戦争』を『war』、2項の『戦力』を『war potential』としている。つまり2項でいう戦力は、1項で放棄した戦争を遂行するための戦力を指す」

 「なぜ9条の政府解釈はモヤモヤしているのか」の回で紹介した「芦田修正」を採用しなくても、2項が「保持しない」とする戦力は侵略戦争に用いる戦力を意味するというわけだ。

 以上の理由から、9条の解釈は上のカコミ部分の解釈となる。よって、集団的自衛権は現行の表現のままで行使が可能だという。

 「『自衛権の行使』は国際法で禁止されている『戦争(war)』ではない。国連憲章は加盟国が武力を行使できる例外を2つ設けている。1つは『安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置』として認めたもの。これを集団安全保障と呼ぶ(国連憲章第42条)。もう1つは、集団安全保障の措置が講じられるまでの間に取れる『個別的又は集団的自衛』(国連憲章第51条)に基づく武力行使だ」(篠田氏)

 「したがって、9条2項は『個別的又は集団的自衛』を行使するための戦力は否定していない」(篠田氏)

(次回に続く)

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