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話を、改憲をめぐって注目を集めている集団的自衛権に進めよう。「集団的自衛権の行使は違憲である」――安全保障法制をめぐる2014~15年の国会審議の中で、こうした議論が展開された。以下で紹介するように、集団的自衛権の行使容認に反対する声が依然として強い。改憲を考えるに当たって、この問題は避けて通れない。
政府は、2014年の閣議決定で集団的自衛権の限定行使を容認するまで、自衛のための武力行使が許容される要件を次のように整理していた。
- わが国に対する急迫不正の侵害があること
- この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
- 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
そして、「わが憲法の下で武力行使が行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない」(1972年の参議院決算委員会に政府が提出した資料)との見解を示した。
本稿ではこの政府見解を「72年見解」と呼ぶ。安倍政権は2014年の閣議決定でこの一部を改め、集団的自衛権の限定行使を容認する新たな解釈を採用した。これを「14年閣議決定の解釈」と呼ぶことにする。
国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について
我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った
憲法13条の要請を実現するためには、「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」(同閣議決定)武力行使も許容される、という判断だ。
日本国憲法 13条
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
相次ぐ反対の声

これに反対する声が後を絶たない。社民党の福島瑞穂・副党首はこの政府解釈の変更を「憲法クーデター」と呼び、強く批判する(関連記事「安倍政権の「憲法クーデター」を許すな」)。「憲法の解釈は確定していた。自民党の歴代政権は、集団的自衛権の行使は違憲としてきた。それ以外の解釈はなかった。72年見解をまとめた内閣法制局の長官も部下たちも、集団的自衛権の行使は違憲としている。それを安倍政権が『憲法クーデター』を起こしてひっくり返した。政治権力が憲法を踏みにじったのだ」
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