1947年に日本国憲法が制定されて70周年を迎えた今年、安倍晋三首相は2020年までに憲法を改正する方針を打ち出した。
対象は第9条(戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認)にとどまらない。
高等教育の無償化など産業界にも広く影響する課題はいくつもある。
自民党は東京都議選で歴史的な敗北を喫したが、安倍首相は宿願でもある憲法改正に執念を燃やす。
政財界の識者に「私の憲法改正論」を聞いた。
シリーズ
私の憲法改正論

完結
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22回
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国民の生命を守るため超憲法的な措置を許すのか
自民党の憲法改正推進本部は「緊急事態条項」の大枠を固め、3月25日に開かれる党大会に諮る意向だ。ヒトラーが独裁体制を敷くのに用いたこの制度に懸念を抱く人は多い。なぜ必要なのか。この案に問題はないのか。憲法学者の西修・駒澤…
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木村草太教授と読み解く自民党の改憲7案
自民党の憲法改正推進本部が3月14日の役員会で、9条に関する7つの改憲案を示した 。25日の党大会に向けて、意見集約が進められる。それぞれの案がどのような意味を持ち、どんな違いがあるのか。新進気鋭の憲法学者、木村草太・首…
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北がミサイル1発撃っても自衛隊は出動できない?
海上自衛隊で自衛艦隊司令官を務めた香田洋二氏は、「自衛隊は憲法だけでなく、新三要件や国会答弁などさまざまなものに行動を制約されている」という。“縛り”が厳しすぎ、北朝鮮がミサイルを撃っても自衛隊が防衛出動できない可能性を…
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憲法と自衛隊の新神学論争=武力行使との一体化
「日本の安全を国連軍に依存する可能性がある。ならば『国連が主導する集団安全保障に日本が何の関与もしない』という理屈は成り立たないのでは」。自衛隊の役割はもちろん「自衛」にある。しかし、国際貢献を議論せずにすませられる時代…
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自衛隊という実力組織を「統制」する術
今回は、自衛隊を統制する術を考える。戦前・戦中の日本は、軍令を司る統帥権が政府から独立していたため、軍の横暴を止めることができなかった面がある。改憲議論の中でこれをどう考えるべきか。
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「自衛隊」ではなく「自衛権」を憲法に定める
今回から、「私の憲法改正論」で紹介してきた憲法学者や国際政治学者、政治家が提案する改憲案のエッセンスをテーマごとに紹介する。これらを分類すると、「集団的自衛権の行使」を認めるものと認めないものに大きく分かれる。
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集団的自衛権をめぐる新たな対立
改憲をめぐる新たな火種に集団的自衛権の行使がある。安倍政権は2014年の閣議決定で、それまで「憲法上許されないといわざるを得ない」としていた解釈を変更した。これに対する反対論が収まらない。改憲を議論する際には、改めて議論…
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なぜ9条の政府解釈はモヤモヤしているのか
“改憲国会”が始まった。日本国憲法の施行から70年超。9条の改憲を志向する党派が両院の3分の2を占める国会での本格的な議論が初めて行われる。この機に臨んで、識者の改憲案をテーマごとに整理して紹介する。その前に政府解釈が持…
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あの石橋湛山も重視した集団安全保障を憲法に
憲法と自衛隊との関係で問題となってきたのは集団的自衛権ではなく「海外派遣」だった。「武力行使と一体化するのではないか」。「非戦闘地域はどこか」。民進党の大野元裕・参議院議員がこれを解消する改憲案を示す。
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「自衛権を定め抑止力を高める現実的妥協」
国民投票をにらみ、国民の間に定着している9条1項と2項を残す。「自衛隊」ではなく「自衛権」を規定することで、神学論争から距離を取る。さらに、集団的自衛権を行使できるようにする。長島氏が提案する「現実解」だ。
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山尾志桜里議員「自衛権に歯止めかける改憲を」
私の考える憲法議論は、立憲主義を貫徹し、その価値を強化する「立憲的改憲論」です。9条に関連して大切なのは、憲法に「自衛隊」の3文字を明記することではなく、国民意思で「自衛権」に歯止めをかけることです。
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安倍政権の「憲法クーデター」を許すな
憲法には理想を掲げる場という役割があります。9条は、世界から戦争がなくなるように、日本が戦争にコミットしないように、という理想を述べています。この理想を降ろしてはなりません。
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「9条は全面削除しても何の支障もない」
篠田英朗・東京外国語大学教授は「9条は削除してよい」と語る。「9条は、先の大戦で負けるまで『ならず者国家』だった日本が、二度と国際法を破ることなく平和国家として歩んでいくことを宣した条項。この宣言は既に実現した」
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公明党は憲法を改正しないという立場ではない
内閣改造でも支持率回復は小幅にとどまる安倍晋三首相。5月以降、強力に進めてきた憲法改正は、トーンダウンしたかのようにも見える。与党の公明党はどう動くのか、同党憲法調査会長の北側一雄・衆院議員に聞いた。
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今は改憲を議論できる時ではない
「自衛隊の運用の現場では、米軍の一体化がどんどん進んでいます。それにもかかわらず管理・統制のあり方は2014年閣議決定の前と変わっていないように見える。これは不幸であり危険。絶対に避けなければいけない状況です」
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中学生が読んで自衛隊違憲となる憲法はおかしい
私のように戦争を研究している者が読むと、9条2項は先の戦争で敗戦した歴史の残滓でしかない。先の大戦で侵略国となった日本は、戦後処理において、主権の一部である軍備と交戦権をいったん奪われました。この敗戦国規定をいまだに引き…
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憲法学者に聞く、9条の解釈はなぜ難しいのか
内閣支持率は低迷するが、安倍晋三首相は憲法改正の意志を変えていない。しかし、改正の柱となる「9条」はなお分かりにくい点が多い。今回は憲法学者の山元一・慶應義塾大学大学院法務研究科教授に9条の解釈について、疑問点を改めて聞…
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船田氏「今のままでの自衛隊明記は不安だ」
自民党憲法改正推進本部の本部長代行である船田元・衆院議員は自民党が都議選で大敗しても憲法改正への動きに「変化はない」とする。ただ、9条に自衛隊の存在をそのまま明記する首相の考えには不安も抱くという。
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もし「自衛権」を国民投票にかけたらどうなるか?
改憲の国民投票で、「個別的自衛権は行使できる」との条項は可決できるかもしれない。しかし「集団的自衛権は行使できる」との条項は難しい。そうなれば、2015年に成立した安全保障法制は否定されることになる。安倍政権にとってこれ…
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9条の鍵は「放棄する」「保持しない」の目的語
「現行の9条は国民の間に定着しており、象徴的な存在になっている。これを修正するのは心理的な抵抗が強い。大切なのは、平和を守ること。そして、そのための安全保障装置として自衛隊を位置づけること。それを明確にすべく9条の2を加…
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