コロンビア大学の専攻は宗教と哲学だった。なぜトランスヒューマニズムに目覚めたのか。
イシュトバン:初めてトランスヒューマニズムを知ったのは、大学の授業でクライオニクスを学んだ時だ。死んだ人間の肉体を凍らせて、技術が進歩した遠い未来に解凍し、蘇生を試みるというアイデアだ。ただ、その時はまだトランスヒューマニストになろうとは思わなかった。
大学卒業後、私はナショナルジオグラフィックのテレビチャンネルで働いた。そこでの仕事は世界の戦地に赴き、独自の視点でリポートするというものだった。
そしてある時、私はベトナムの地雷撤去に関する取材をしたのだが、その最中、うっかり不発弾を踏みかけた。現地のガイドが私を押しのけてくれて助かったが、その時、私の中で何かが変わった。これからは死を乗り越えるために人生を使うべきだと強く感じたんだ。そこからトランスヒューマニズムという概念にのめり込んだ。
その後、私は2013年にトランスヒューマニズムとテクノロジーの未来を描いた『The Transhumanist Wager』という小説を発表した。この本は哲学とサイエンス・フィクションの部門でベストセラーとなった。それからトランスヒューマニストと認知されるようになり、ハフィントン・ポストやVICEなど現在3つのメディアで定期的にコラムを書くようになった。
トランスヒューマニスト党まで設立
民主党でも共和党でもなく、独自に「トランスヒューマニスト党」なるものを立ち上げて、今回の大統領選に出馬したと聞いたが……。
イシュトバン:その通りだ。トランスヒューマニスト党を立ち上げた後、4カ月にわたって全米をバスツアーした。我が家の庭からスタートして各地を回り、最後にワシントンDCに行き、2014年12月にトランスヒューマニストの権利をまとめた「トランスヒューマニスト法案」を連邦議会議事堂に提出した。その狙いはもっと自由に科学を利用できる環境を作ることだ。自分の身体に好きなテクノロジーを自由に移植して、肉体をより良く保ち使えるようにする――。米国では、法的に簡単なことではない。
この国の政治は十分にテクノロジーを使っておらず、いかに世界が早いスピードで変化しているかということについても理解していない。ヒラリー・クリントンもドナルド・トランプも、最も重要な遺伝子の研究については言及していないだろう。この国の人々の多くはクリスチャンだ。だが、科学とテクノロジーを最重要視する大統領がいれば、この国を大きく変えることができる。
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