3Dプリンターで「将来作る顔の模型」を
米国では、ITベンチャーなどで成功し、巨万の富を手に入れた経営者たちが、2つの分野の研究開発に多額の資金を投じています。1つが宇宙、そしてもう1つが不老や長寿をテーマとしたものです。この先、長寿研究が進めば、美容医療でもイノベーションが期待できそうです。
高須:昭和大学の美容外科には僕の寄付講座があって、そこで研究なんかをしてもらっています。色々な研究設備を全てこの診療所で持つわけにいかないでしょう。だから検査や治験、データ採取は大学にお願いしている。大学側は論文が作れるし、病気にも役立つ。互いにメリットがある。その中で、僕は再生医療がこれからの美容外科の主流になると思っているんです。
今、僕がやりたいのは、自分の体の軟骨を培養して増やして、自分の鼻やあご、骨格を作るという取り組みです。実はもう実験モデルがあるんですよ。見せてあげましょうか。

高須:これは僕の顔を3Dプリンターで作ったものです。僕の顔をマルチスライスCTで細かく割ってスキャンで撮り、それを3Dプリンターで再現しました。僕の脳みそも骨も顔も、全部くっついたものがこうして出来上がっています。
そこに軟骨を再生してこんな鼻を作ろうと思っていて。赤色の部分のように軟骨を再生して付けようと考えているわけです。
再生医療が進化すると、「こういう鼻にしたい」とプラスチックで模型を作ってオーダーすると、耳の軟骨とかをベースに型枠にはめて培養して、狙った通りの形の軟骨を作ることができると思うんです。それをぺたっとはめてやると自分の細胞だけで整形ができるようになるはずです。
現状では治験をするにも国の許可が必要です。ただ可能になれば、まず僕は自分の顔を使って挑戦してみたいですね。実はそんなことを考えているなんて、今、初めて話したんだよ。まだ誰も知らないだろうね。
当分の間は売り物にはしませんよ。安全性が何より重要ですから。まずは僕が実験素材になって挑戦する。ただこれが可能になれば、仮に交通事故で顔がぐちゃぐちゃになっても、骨を培養してぱたっとはめるだけで、欠けたジグゾーパズルのピースを作ってはめるみたいに治療することができるようになるかもしれません。皮膚ごと再生して、ぺたっとくっつけることも将来はできるはずです。
今だって、顔面の総移植は可能になったわけです。ただ第三者の顔を移植した時には、免疫抑制剤を使い続けなくてはならないでしょう。そして免疫抑制剤を使うとどうしてもほかの病気に感染する可能性が高くなる。免疫を落としているわけですから。
けれど自分の組織を移植するのであればトラブルは起きないはずです。現実に、頭の毛だってこっちの毛を別の場所に持ってきて植えているだけで再生しているわけです。1本の毛を1000本に増やす技術は次世代のものになるのでしょうが、ちょっとしかない皮膚を大量に増やしたり、少ししかない骨を培養して増やしたりするのは、もう可能です。人体実験をしていないだけで。
ただ、いつかはそんな未来が訪れる。そのために僕は自分の3Dを作って準備をしている。軟骨がオーダーできるようになったら、「これをお願い」と(笑)。
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