1977年、あるSF漫画が上梓された。JRが国鉄で、海外旅行は商店街の福引きで当たればという時代。星野鉄郎と謎めいた美女メーテルがSLに乗って、不老不死の機械の体を求めて宇宙を旅する奇想天外なストーリーに、胸躍らせた記憶がよみがえる。
 あれから来年で40年。我々の夢想をかき立てた世界は、思った以上に実現に近づいている。
 美容医療の進化に伴って、カネさえ払えば理想の容姿を手に入れることはある程度可能になった。90年代以降、遺伝子の解明が進んだことで、謎だった老化メカニズムも明らかになりつつあり、起業家たちもバイオテクノロジーとビッグデータを融合させて「不老」の実現を目指している。
 もちろん、倫理や宗教との葛藤はある。だが、肉体と機械の融合も一部で進む。鉄郎が求めた機械の体はいまだ夢物語だが、不可能ではないと思えるくらいに研究は加速している。技術の進化と欲望の深化。それが空想の世界を現実に変えようとしている。
 若さはどこまで買えるのか、「不老」はどこまで可能なのか、そして、テクノロジーは人間を超越できるのか──。その最先端をのぞく。
(日経ビジネス7月11日号の特集「永遠の欲望市場 不老 若さはここまで買えるの連動企画