
劣等生だった、でも「走った距離」は裏切らない
佐伯:ご自身の経験も踏まえて、ゼロイチ人材に必要なものはなんだと思いますか。
山田氏:ゼロイチ人材の話ですが結構重要だと思うのは、比較しないことです。これは人生においてもそうだと思っているんですけど、要は世の中って相対的に考えると結構不幸になることが多くて。例えば彼の方が給与が高いとか比較した瞬間に人って不幸になっていくんですよね。
だから、僕は世の中って絶対評価だと思っていて。高度成長時代でもないし、みんなが一律にどうこうという時代でもないじゃないですか。僕は常に絶対評価で生きてきて、世の中の評価はまったくどうでもいいんですね。世の中の評価を僕が期待したとしたら、世の中の今の評価に僕が迎合する時点で相対的になっているんです。
僕は別に自分の人生がどうだったかなんて期待してないんですよ。だって今の世の中の正解って何かというと、少し昔の考え方かもしれないけど、いい大学に行って、いい会社に入って。そういうのって僕はどうでもいい。
佐伯:どういう生い立ちから、そういう価値観や考え方を持つに至ったんですか。
山田氏:すごくシンプルで、僕は人並みになろうとずっともがき続けてきた人間なんです。まずすごく頭が悪かった。じゃあ、スポーツはどうかというと、例えば4歳から中学までやった水泳は、結局飛び込みもできずに終わったんです。バスケや剣道、サッカーに陸上にソフトボールも3年以上やったけれど、どれもレギュラーになれなかった。高校1年のときにやった陸上部の長距離なんて、1位に2周差ぐらいつけられて、僕のせいで大会のプログラムが押すという珍事件が起きたんですよ。
何が言いたいかというと、人並みになることが極めて大変だったんです。頭もよくないし、運動もできないし。他人よりも10倍も20倍も努力してようやくゼロになるというのが僕にとっての受け入れざるを得ない人生なんです。
だから、世の中の人たちが何か熱中できることを見つけて絶対評価で、自分が絶対だと思って挑戦したら、僕だって今好きなことができて幸せな人生を送れているので、みんな幸せでとんでもない社会ができるんじゃないかと思うんです。
佐伯:絶対評価が大切なんだという考えるようになったターニングポイントはあるんですか。
山田氏:あります。高校3年生のときに地元でNHK杯という大きな駅伝大会があって、僕がアンカーだったんですが、優勝したんです。球技とかいろいろなものって不器用だったんですけど、走った距離は裏切らなかったんです。足を止めずにいれば必ずゴールが来る、まずは足を動かし行動することが大事なんだということを高校3年間で学んだんです。
会社をつくって2年半、1000日間社員は僕1人だったんです。最初のころなんて、ようやくシャツを作ってもらっても、自社サイト「ファクトリエ」のアクセス数が1から増えないんです。要は「Amazon」でも売ってない、「楽天」でも売ってない。ファクトリエって知らないと来ないので誰も来ないんです。僕しか見てないんですよ。そこで、行商を始めたんです、トランクケースにシャツを詰め込んで。
そんな1000日間、僕は毎日手紙を書くと決めて、いろいろな人に送ってお客さんになってもらっていったんです。それがあって、虎屋の黒川光博社長やシャネルのリシャール・コラス社長を始め、いろいろな人たちがファクトリエのお客さんになってくれたんです。資本金なんて50万円。資金調達もVC(ベンチャーキャピタル)とかを一切しないで銀行借り入れで、週末バイトをしながら1人でやっていた。そんな中でも、自分を保てていたのは毎日手紙を書いていたから。どんなに酔っぱらっても、風邪を引いても、自分が決めた1日1通手紙を書くことをやっていたのが自分の心を強くしてくれたんです。
週1回の英会話でも、ジムでも何でもいいと思うんですけど、自分がちゃんと決めたことをやっていると、自分の心に根拠のない自信が生まれてくるんです。これってすごく大切だと思っています。
でも、あまりストイックにすると辛くなってしまうので、起業してから毎日、寝る前に今日よかったことを3つ声に出しているんです。そうしたらどんなに辛い、例えば最初のころのような行商をしても1枚も売れず、1カ月後に200万円の支払いが迫っているのにお金がないといったときでも、今日一日幸せだったなと思えるんです。
Powered by リゾーム?