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「経営の神様」と呼ばれたパナソニック創業者・松下幸之助氏は、どのような経営観の持ち主だったか。読者との共同企業研究プロジェクト「みんなで変えるパナソニック」では、松下哲学を振り返る。経営の第一線から退いた直後に日経ビジネスが実施したインタビューでは、“松下語録”が次々と飛び出し、経営の要諦を存分に語っていた。
(本記事は日経ビジネス本誌1973年8月20日号の編集長インタビューを再編集したものです。聞き手は当時の本誌編集長、太田哲夫)

■お知らせ■

日経ビジネスの「オープン編集会議」プロジェクトでは、編集部と一緒にパナソニックの未来を考える「第4期オープン編集会議メンバー」を20人程度募集します。プロジェクトのテーマは「みんなで変えるパナソニック」です。詳細は記事最後の参加者募集概要をご覧ください。ご応募、お待ちしております。

■オープン編集会議とは
読者が自分の意見を自由に書き込めるオピニオンプラットフォーム「日経ビジネスRaise(レイズ)」を活用し、日経ビジネスが取材を含む編集プロセスにユーザーの意見を取り入れながら記事を作っていくプロジェクト。オープン編集会議メンバーや取材協力者が選考に参加する、創業5年以下のスタートアップ起業家を対象にした「日本イノベーター大賞・日経ビジネスRaise賞」の候補者を募集している。

「経営の神様」と呼ばれたパナソニック(旧松下電器産業)創業者の松下幸之助氏(写真:パナソニック提供、以下同)

ずいぶん長い間、 働かれましたね。

松下幸之助氏:55年ですからね。しかし過ぎ去ってみると、そう長いとも思わんですな。気がついてみたらここまできておったというわけです。問題も多々ありましたが、多くは忘れておりますわ。非常に博覧強記で暗記している人もありますけど、ぼくらはじきに忘れますわ。政治家がそんなだったらもうアカンですわ。商売というのはありがたいもので、ええもんつくったり、商売を勉強してたらそれですみますけどな。

“経営の神様”の名も重荷ですな

世間から“経営の神様”と言われることについて、松下さん自身はどうお思いですか。

松下氏:いつどこでどうなったのか知らんけど、1人が言い出したら次の人もそんなことを書いたりしますからね。いつとはなしにそういうことになっちまったんですな。当の本人は一向に関係なく思てんねんけどね。まあ、いっぺんいい評判をとることは結構のようでっせ。けどね転落する場合があります。それでそれが非常に重荷になりますな。何もぼくに関係ないことを責任持たされるような感じがしますからな。だからプラス、マイナスでいうと、マイナスの方が多いですわ。人間の幸せというのは平凡に、名も知られない程度にいけばいちばんでんな。なまじっか何かの目標になるとか、話題の種になるということは必ずしもええとはいえまへんな。

昭和初期のパニック乗り切って

みんな忘れたとおっしゃいますが、振り返ってあのときが一番つらかったといったことはありませんか。

松下氏:まあ一、二申し上げると、一つは昭和の初めに、非常なパニックがありましたな。200人ほど従業員おったんですけどね。金はないから仕事続けることができない。売っても売れない。だから結局、半分解雇するという問題が出てくるわけですな。うちだけが悪いというんやないし、もう超一流のところも悪いんやからね。銀行でもつぶれるんやから、これはまあ許されるやろ、こう思うたんです。

 でも、考え直してね。1人も解雇しないでいく方法はないかと思うて、半日勤務するようにしたんです。半日分の給料だけ損になるわけですけど。もう解雇いっさいしない、全部に月給あげるということを発表したんです。それで2カ月様子をみてみようと。そうしたら、こんどは店員は一生懸命販売に力を入れたんですよ。休みなしで。職工さんも、なかなか話がわかってくれる、と喜んで半日勤務やった。えらいもんでな、それから2カ月すると、倉庫が空になったんですよ。そういう体験を経て後には、見違えるほど会社がよくなったんですわ。

 大きな二つの体験をしたわけですわ。従業員の信頼が高まったことと、店員が、売れば売れるものだ、とわかったことです。

 それから戦後に、財閥指定になったりしたときには、ちょっと困りましたけどね。

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<コンセプト>
みんなで選ぶ最高のスタートアップ起業家

<応募資格>
+創業5年以下(2013年11月以降創業)のスタートアップの代表者
+既にサービスや商品をリリースしていること
※自薦・他薦は問わない

<募集期間>
10月9日(火)~10月28日(日)

<選考メンバー>
日経ビジネスRaiseコミュニティーのコアメンバーやオープン編集会議協力者による選考
※オープン編集会議協力者:岩野和生・三菱ケミカルホールディングスCDO/兼元謙任・オウケイウェイヴ会長/小泉文明・メルカリ社長兼COO/杉田浩章・ボストン コンサルティング グループ(BCG)日本代表/千葉功太郎・Drone Fundゼネラルパートナー/辻庸介・マネーフォワード社長CEO/村田祐介・インキュベイトファンド代表パートナー/森川亮・C Channel社長/米倉誠一郎・法政大学大学院教授・一橋大学特任教授ほか
(敬称略、50音順)

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