成功しよう、勝とうと思わないとリングにも上がれない

日経ビジネスでは「起業って怖くない? 『起業のリアル』を語ろう」というテーマで、ユーザー参加型メディア「Raise」にて読者から意見を募ってきました。イノベーションに関する取材をしていると、もっと多くの人が起業しやすい環境が必要だという見方をよく聞くからです。

井口氏:「怖さ」を問題にするのはなんでなんですか。怖ければやめればいい、それだけですよ。起業はちょっと怖いけど、だからいろいろと支援します、というようなことが、本当に必要なんでしょうか。

 別の言い方をすると、「成功しよう」というのと「失敗しないようにしよう」、あるいは「勝とう」と思うのと「負けないようにしよう」というのでは、生きていく上での姿勢は全く異なりますよね。

 サンフランシスコやシリコンバレーでは、石を投げればバリバリのすごい起業家に当たるわけです。何回も起業してものすごい財産を築いているような。そういう人に勝とうと思わない限り、同じリングにすら上がれないですよね。

 だから、何か新しい製品やサービスを作ったり、起業したりするときに、「俺、うまくいくか心配でさぁ。失敗しないようにするのも大変で」なんて言っているような人が、イノベーションを起こせますか。「俺は絶対に勝つ、死ぬほど成功する」と確信している人が、新しい価値を創造するんです。

「怖くないですか」なんて愚問ですね。

井口氏:そう、愚問なんですよ。戦う前から勝負になっていないどころか、土俵にすら上がれていない。

セカイカメラやテレパシーが最終的にうまくいかなかったことは、今後新しいサービスを立ち上げて資金調達をする際に悪影響を及ぼすようなことはないでしょうか。

井口氏:日本はよく知りませんが、米国や欧州では全くないですね。なぜかというと、チームを作って、イケてるプロダクトを作って、少なくとも大きいトレンドにしたということだけでも、十分に価値があると判断されますから。

 クルマも飛行機も電話も、あらゆる発明は失敗なくしてできていないですよね。失敗しないで成功しようって、そんな虫のいいことは無理なんじゃないですか。だから、何か挑戦をする際に、失敗するとダメだとか、不安と思うとかは問題外です。よくない考え方に飲み込まれていますよ。

 米国で若い人たちと話していると、「井口、お前イケてない」とか「俺の方が100倍いいから出資しろ」みたいに話しかけてくる連中ばかりです。「怖い」とか「不安」とか「失敗すると傷がつく」とか言っていては、何か新しい価値を生み出すことに挑戦しようという発想すら、出てこなくなってしまうのではないでしょうか。

次ページ 【お知らせ】「第3期オープン編集会議メンバー」を公募します