やりたいもの、できるもの、求められるもの

セカイカメラでは15億円ほどの資金を投資家から集めたそうですね。

井口氏:そうです。ただ、結果的にはうまくいきませんでした。今、失敗の原因を私が言うと後付けで何でも言えてしまうから、正直、説明は難しい気がします。ただ、ARのアプリケーションでこれまで成功しているのは、「ポケモンGO」のようなゲームを除くと、まだほとんど皆無です。

 テクノロジーって、そういうところがありますよね。映写機だって無線機だって飛行機だって電話だって、それ以前に原型のようなものはたくさんあったんだと思うんです。そういう積み重ねがあって、どこかの段階で製品として広がって、誰もが習慣的に使うほど普及するんです。僕らは、普及した製品についてはよく知っているけど、その前の原型は記憶にない。それを考えるとARもこの先どうなるか、非常に興味深いです。

井口さんにとって、新しい製品やサービスを考える上での軸のようなものはあるのでしょうか。

井口氏:純粋に面白いものという狙い方では必ずしもないのですが、おそらく3つの要素があって、「やりたいもの」と「できるもの」と「求められるもの」のバランスだと思います。自分がやりたいと思うものじゃないとパッションは生まれないし、行動も起こりにくいですよね。

 一方、それを可能にする何らかのスキルやアセットがないと、なかなかうまく実現できません。例えば、プログラミングがすごく苦手とか、コンピューターやデジタルが嫌いとか、そう思っているとARのようなサービスは無理でしょう。

 あとは、世の中がそれを使ってくれるか。いくら自分が気に入っていても、人気が出ないとむなしいじゃないですか。

 それと、今の会社(DOKI DOKI, INC.)を始めるとき気付いたんですけど、非常に孤独だなと感じることが結構あるんです。

人間の孤独を解消したい

「孤独」ですか。

井口氏:何だろう。例えば、何か新しいプロジェクトを起こそうと考えているとき、自分一人で沈黙して考えているわけではないんですよ。誰かと語り合っているときが一番楽しいんですよね。

 セカイカメラもテレパシーも、自分のやりたいことをできる限りの力をかけてやったつもりなんですが、自分は何でこれをやっていたんだろうと振り返ると、人間の孤独を解消したいという気持ちがすごく強かったんだと気が付いたんです。

 セカイカメラとテレパシーで20億円くらいファンドレイズして、トータルで100人以上の素晴らしい方々と仕事をさせていただいた中で、やっぱり失敗するのは嫌ですよね。しくじるのもつらいじゃないですか。起業したり製品を作ったりするのをやめてもいいと思うこともあるのですが、でも、やっぱりやりたいんですよ。

 先ほどもお話ししましたが、アイデアを思い付いたら、実現してみんなで面白がりたいんです。だから、やめられないんですよ。

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