面白いですね。「セカイカメラ」もそうでしたが、これまで世の中になかったサービスを作るとき、井口さんはどのようにしてアイデアを形にしているのですか。

井口氏:僕には良くも悪くも、この先の世界が見える瞬間というのがあるんです。会話をビジュアル化したら世界はどうなるかとか、そんなイメージがぱーっと頭に浮かぶんですよ。こうなるに違いないって。SF作家の感じに近いのかなと思っています。そうなると、もうどうしようも試してみたくなるんです。

 だけど、それを一度に実現することはできないから、一番大切な機能に絞ってまずは作って自分で触って動かしてみるんです。そうしないと、それが本当にイケてるのかどうかわからないですから。

 

 「セカイカメラ」のときもそうでした。「こういうのがいいな」と思っていたら、目の前にそれができる人が現れたんです。地下鉄東西線に乗っていたら、向こうから知っている人が乗り込んできました。それが、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授の赤松正行さんでした。まだ日本でiPhoneが発売される前のことです。

 

 赤松さんに「セカイカメラ」というのを考えているんだと言ったら、2カ月くらいでめちゃめちゃイケてるデモンストレーションを動かせるようになっていました。

 

 何か新しい世界観が思い浮かんだら、あとはやるしかないんです。なにより、試作品を作って人に自慢したいじゃないですか。面白いでしょう、絶対イケてるからちょっと触ってみてとね。僕は子供っぽいんですよ。

真っ先に試作をしてデモを見せることで、仲間も投資家も動かせるという効果があるのではないでしょうか。

井口氏:起業家と投資家がうまくマリッジ(結婚)しないと、プロダクトは動かないですよね。確かに、プロダクトがあるから、投資家にも説明しやすいし、ファーストカスタマーも獲得できるという効果はあります。

セカイカメラのときはどうでしたか。

井口氏:セカイカメラが注目されるきっかけは、米国で開かれたイベント「TechCrunch50」でした。そこで、TechCrunch50の立ち上げに関わっていたエンジェル投資家のジェイソン・カラカニスに出会ったんです。応募してきた1400社の中の50社にセカイカメラの頓智ドットを選んでくれました。

 そこでステージに上がってプレゼンすると、もう大ウケでスタンディングオベーション。そこからの投資のオファーがすごかったですね。日本を出発する前は、日本の投資家は見向きもしなかったのに。

 iPhoneはまだ日本で発売されていなかったから仕方がない面もありましたが、そもそもiPhoneに対してタッチパネルが使いにくいとか、おサイフケータイを使えないとか、iモードも使えないとか、もうさんざん否定されました。今から振り返ると笑っちゃいますが。

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