“摩擦“を取り除け

イノベーションを起こしていくには、ゼロから新しいマーケットを立ち上げられる人材を育てていく必要があります。ゼロからイチを創造するうえで、最も重要なスキルは何でしょうか。

カラカニス氏:起業家にとっては、従来の製品よりも10倍優れた製品を作ることです。継続的な改善も重要ですが、市場をひっくり返したいのなら、従来の何倍も優れた製品を作らなければなりません。ウーバーやエアビーアンドビーなどは、いずれもそれを実行しています。

 そのうえで、非常にシンプルな視点もあります。時間の節約、苦労の軽減、節約。一言でいえば、日々の生活における摩擦に気が付き、それを取り除く実行力です。

 例えばウーバーがやったことは、タクシーを呼ぶのに電話をして、配車係と話し、下車の際に運賃を払うという “摩擦”を取り除いたんです。ウーバーはこれらすべてをスマートフォンのアプリで実現しています。

シリコンバレーで活動する日本人起業家の内藤聡(Anyplace CEO=最高経営責任者)さんに投資していますね。

米Anyplaceの内藤聡CEO(最高経営責任者)。カラカニス氏から投資を受けた日本人。ホテルの空き部屋を中長期の“住居”として提供するサービスを展開している。
米Anyplaceの内藤聡CEO(最高経営責任者)。カラカニス氏から投資を受けた日本人。ホテルの空き部屋を中長期の“住居”として提供するサービスを展開している。

カラカニス氏:彼も同じです。住居にまつわる摩擦を取り除くことをしています。サンフランシスコで1カ月、家を借りようと思ったらいかに大変か。家具もインターネットのアクセスもテレビもない……。スティーブ(内藤氏の呼称)は、こうした不便をすべて解消するソリューションを提供しています。

※編集部注:Anyplaceはホテルの空き部屋を中長期の“住居”として提供するサービスを展開している。今後、アパートなどの空き部屋にレンタル家具などを揃えて中長期で貸し出すサービスも準備中。1カ所に定住しない新しいライフスタイルを求める人たちをターゲットにしている。

 スティーブはハードワーキングだし、とても賢い。私は常に、人に投資をし、ビジネスのアイデアはその次なのですが、彼に投資を決めた時もそうでしたよ。

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