銃、ドラッグ、ギャンブル……カオスの中で育った
あなた自身は両親にどのようにして育てられましたか。
カラカニス氏:ブルックリンの野蛮人の中で、サムライのように育てられました(笑)。6~7歳のころからバーで働き、12~14歳のころは朝4時までは働いていました。ケンカ、銃、ギャンブル、ドラッグ……。クレイジーなカオスですよ。そんな環境で育ちましたから、社会に出た時は余裕でしたね。
でも、そんな環境で子供を育てることはお勧めしません。
そのような環境で育ったことは、あなたにいい影響を与えましたか。
カラカニス氏:いいえ。子供たちには、そんな環境に行くことは絶対に勧めません。犯罪だらけでしたし、本当に危険でした。バールで頭をかち割られて男が床に倒れるとか、そういうのを10歳で見ていたんですよ。そんな状況、想像できますか。
幸いにも私は生き延びましたが、生存者バイアスというのがあって、修羅場を生き抜いた人は、そのような環境は問題ないと考えがちです。しかし、私は娘にそのような世界を見せたくありません。
ただ、厳しい環境を生き抜いた人がとても打たれ強くなるというのは、確かにあると思います。しかし、何人かは生き残ったとしても、それ以外は犯罪者になったり命を落としたりするようでは意味がありません。私は生き残ったからといって、そのような環境に子供たちをさらすのは賢い選択ではありませんね。
子供にギャンブルはやらせるな
著書の中で「ノー・ギャンブル、ノー・フューチャー」と語っています。カラカニスさんは、どうやって“勝てる”ギャンブラーになったのですか。
カラカニス氏:規律と自己認識です。
私は、自分がどんな環境で育ってきて、どんな人間かを理解しています。自分はサムライだから、かつては問題があれば、刀を抜いて問題を解決すればいいと考えていたこともありました。お金が必要だから、ギャンブルをやろう、といった具合にね。
しかし、それは良い解決方法でありません。もし、刀を持っていて、ギャンブルのやり方を知っているのであれば、それをもっと知的に活用することができるからです。
私はギャンブル狂にはなりたくありません。しかし、資金があって、自分に有利な状況でギャンブルができるのであれば、確実にお金を稼ぐことができます。逆に、規律なきギャンブルは、身を亡ぼすだけです。
私は、ディールごとにうまくいくと考えた理由をメモにまとめ、あとでなぜそれが間違っていたのか、正しかったのかを読み返すようにしています。子供時代の経験から、自分にはギャンブラーの素質は備わっていると思いますが、そのすべてを大人になって発揮する必要はありません。むしろ、取捨選択していかないと、規律なきギャンブル狂になってしまいかねません。
私たち大人は誰もが、子供時代の産物です。子供時代に経験した様々なことが部品のように組み合わさってできているのです。だからこそ、子供時代の経験の中で、何を大人として選択して生きていくのか、そして、何を自分の子供たちに引き継いでいくのか、その選択が非常に重要だと考えています。
誰しも、子供時代に失敗したり、怖い思いをしたりした経験はありますよね。だから、大人になって自分たちの子供には過保護になりがちなんです。しかし、もっと自分とは何者かという自己認識をしっかりすれば、もっといい選択肢を子供たちに与えられるのではないでしょうか。
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