日本は非常にいい国、ベンチャーが活性化する
原島氏:どんなお子さんだったんですか?
澤田氏:好き勝手やっていた。そして好奇心が強かった。紀伊半島一周もしたし、高校時代は北海道も回った。地図を見たらシベリアもヨーロッパももっと大きいので、海外にいきたいなと。それでマインツ大学に行ってそこを中心に旅行したんですね。新しいものを見たり聞いたりするのが好きでしたね。小さい頃は遠くまで出かけると帰りが遅くなっていつも怒られた。親は心配したと思う。好奇心は今でも強いですね。
宮本英典氏(東京応化工業):昔はもっと事業への規制があったと思います。H.I.S.ではどんな壁があったのですか。
澤田氏:最初やろうとしたときに、旅行業務取扱管理者の資格が必要だと言われたんですが、すぐ取れない。調べたら、パッケージツアーの企画・販売は資格が必要なんです。でも当時は航空券だけなら資格はいらないということが分かったので、航空券だけ売ろうと始めたんですよ。しかも大手(旅行会社)さんもやってないニッチな領域だったので。
一同:おお、なるほど。
澤田氏:その後、資格は取りましたけどね(笑)。
宮本氏:業界は大騒ぎだったのでは?
澤田氏:大変でしたよ。H.I.S.が安く売ったら、大手さんからH.I.S.に航空券を卸すなとプレッシャーが行って、「あなたには売っていません」という手紙が来る。でも、商品は入ってくる。席を空けたままでは仕方ないし、人気のない航空会社だと売れないですから。手紙だけは来るけど、自由に売ってよかったんです。悪いことはしてませんからね。お客さんは安くて喜んで、航空会社は席が埋まって、うちは利益が出る。いいことは止められないんですね。
入江清隆氏(大日本印刷):新事業を担当しています。H.I.S.さんが大きくなった後に、「変なホテル」を始められましたが、大企業から新事業をうまくやるポイントは何でしょうか?権限の委譲や、資金提供や、小さく始めるとか。会社の中にいると、社内の規制があったりします。H.I.S.さんの中ではどういう考え方で新事業を始めているのでしょうか。
澤田氏:特別な規制はありません。澤田経営道場という公益財団法人が運営する経営者を育てる道場があり、卒業して独立する道場生もいます。その時に会社が出資したり、自身で出したりしますが、いつも言っているのは、事業だから、利益を出さなければいけない。利益が出るビジネスモデルなのかを検証しなさいと。あまり干渉はしません。自分でやってもうけないと意味ないですよね。失敗することもありますけど、失敗なんていっぱいある。気にしちゃダメ。
入江氏:変なホテルは結構初期投資をしていますよね。
澤田氏:変なホテルはマスコミが取り上げてくれたから、最初から利益が出た。もともとロボットホテルを作ろうと思ったのではなくて、世界一生産性が高いホテルを創ろうと思ったんです。ロボットではなく生産性を重視した。
庄司:今年の春から、海外に長期出張に行かれているそうですが、今のところ、どんな気づきがありましたか。
澤田氏:欧州、アジア、中東と回りましたが、ドバイで感じたのは、ドバイって実は石油が取れないんですよ。でも発展している。国の政治次第で何でもできる。やり方次第。
ベトナムはとにかく元気ですね。これからまだまだ発展する感じがします。バイクも走り回って日本の数十年前と同じ活気がある。もう20カ国弱くらい回っていますが、いろんな国を見ていると、その国が発展していくなとか、これから落ちていくかなというのが、わかりやすいですね。
日本は非常にいい国です。安定しているし食事も美味しいし、文化も芸術もある。だからインバウンドも増えている。日本でベンチャーがどんどん出てくれば、新しいビジネスが出てきて雇用が生まれるし、新しい仕事がどんどん増えて活気づいていくと思います。
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