個人でエンジェル投資した会社の7割は上場

庄司:澤田さんは投資家としての顔もありますね。

澤田氏:話が持ち込まれることは多いですね。たいがい僕の出資先は上場する。

庄司:成功するかどうかどう見極めているのでしょう。

澤田氏:難しくないですよ。まず基準の1つは人間性が良い人です。変わった人でもいいんですけど、なんとなく悪いことをしそうとか、だましそうな人相の悪い人はやめた方がいいですね。2つ目はビジネスモデルが伸びるかどうかです。悪ければ伸びない。あとは履歴書を見て、「運」がある人。運はいいときと悪いときがありますけど、履歴書を見たり、話を聞いたりするとわかります。だいたいそういう人に出資すると、7割は上場、または大きくなります。

 起業は、自分自身にとってはある程度利益を出して生活を豊かにすること。それ以上に、長く続けたり大きくしたりするには、世の中や地域のためになるとか、新しい産業を興すための役に立つとか、そういう大きな目的があったほうがいいです。社会に貢献できる会社が、大きく伸びる可能性がありますよね。

庄司:スタートアップを始めたい、という人が増えているように見受けられます。日本の起業環境をどう見ていますか?

澤田氏:米国や中国に比べてよくないと思いますね。米国や中国はお金を出す人が多いというのもありますが、それ以上に、日本には規制があったり許認可が必要でしたり、うるさいんですよ。何かやろうと思ったときに、環境的にしづらい。だからベンチャーの数は日本より、米、中が圧倒的に多い。日本でも規制とか今の時代に合っていないルールをなくして、自由にやらせたら、どんどん新しいことが生まれます。悪いことを除いて全部やったらいいという環境を作ればもっと出てきやすいし、発展して、投資家が付くようになります。

原島洋氏(ウェブマスターズ):大学を卒業した後、最初から起業するつもりだったそうですが、どうしてですか?

澤田氏:西ドイツのマインツ大学に留学していた時、旅行が大好きで、旅行をするためのお金が必要だったんです。それで(日本人向けの)ナイトツアーを企画して、かなり反響がありました。学生時代に半分事業みたいなことをやり、実入りが多かったので自分でやったほうがいいと思うようになりました。

原島氏:もともと日本にいた時は、起業しようという思いはなかったのですか?

澤田氏:日本にいた頃は意識はなかったですね。ドイツで旅行費用を稼ぐようになってからです。

庄司:当時も、日本の友人たちは就職していたと推測します。会社員になることはまったく考えなかったのでしょうか?

澤田氏:そうですね。でももし僕が就職していたらダメ社員だったと思いますよ(笑)。

山下雄己氏(電通国際情報サービス):学生時代、H.I.S.さんの商品でバックパッカーをしていました。昔と今とでは、旅行を取り巻く環境も変わっています。

澤田氏:40年前と今では旅行へのハードルが全然違いますよね。僕が起業したころは、もちろんスマホなんてなくて、旅先の情報は本を読むか、宿で情報交換するかでした。今は全世界でスマホを使ってホテルでも航空券でも予約ができます。随時価格が変わったりもしますね。世界中の人々がスマホを持ったことで、旅行の仕方はずいぶん変わりましたよね。

庄司:もし今、学生だったとしても、やはり起業していましたか。

澤田氏:チャレンジしたい性格ですので、そう思いますね。スマホを使って何かをやっていたと思います。

田中宏氏(大正製薬ホールディングス):起業できる人とそうでない人がいると思うんですが、始める際というのは、最初から事業に対して自信があるんですか?

澤田氏:最初はないですよ。事業を何回かやっていて成功しているならあるんでしょうけど、初めて事業を起こしたりチャレンジしたりする時はやっぱり不安ですよね。

田中氏:それでもやってみようと思うのは、ビジネスモデルが論理的にこれでいける、と思うからなのか、あるいは人間としての「勘」みたいなものが礎にあるのでしょうか。

澤田氏:会社勤めをするのもいいと思いますよ。安定しているし環境もいい。ただ、僕は、それよりも自分で、苦しくても失敗してもいいから、チャレンジしたかった。性格の問題だと思いますね。事業が全部成功するわけじゃない。向き、不向きもあるし、運もある。その人にあったことをやるのがいい。泳ぐのが得意なら泳げばいいし走るのが得意な人は走ればいい。事業をやりたい人はやればいいし、安定的に大きな会社で研究したいというのもいいと思いますよ。起業する人が偉いとは思っていなくて、それぞれの道がありますよね。

田中氏:澤田社長の場合は、やれるというよりも、やりたいという感じだったんですね。

澤田氏:やりたい、という気持ちですよね。頑張って会社を大きくして、利益を得ようかなと。性格の問題じゃないでしょうか。

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