「俺の人生、大企業勤めのままでいいのか?」

スタートアップにとって人材獲得の環境はいかがでしょうか。

中嶋氏:そもそもスタートアップが人材を調達する手段は、これまではあまり整っていませんでした。もともと日本は人材の流動性が低く、大企業が人材を囲っているからです。

 この“囲い”は、スタートアップにとってはダムを外側から見ているようなものです。

 いい人材がいるはずなのに、どんな人材がダムの中にいるかわからず歯がゆい。求人広告とヘッドハンターの活用が採用の2大手法でしたが、前者は転職したい人しか応募してこないし、後者はヘッドハンターが選別した人しか会うことができません。スタートアップの経営者からすると、そのダムの中を直接見て、ほしい人材を探したいわけです。

 大企業しか中途採用をしない状況では、求人広告を主体とした従来の仕組みは機能的です。応募者が殺到するならば、いい人材をスクリーニングしたうえで紹介することに価値はあるからです。ただ、大企業のように知名度がないスタートアップはそもそも応募者が少ない。そこで、登録された求職者の情報を、お金を払ったスタートアップが自ら見て求職者にコンタクトできるような、当社のような仕組みが受け入れられているのでしょう。

大企業からスタートアップに転職したい人も増えているのでしょうか。

中嶋氏:以前からいたはずですが、どんな会社がどんな事業を始めていて、どんな人材をほしがっているのかを知るすべがあまりなく、躊躇していた人もいたと思います。

 スタートアップへの転職が身近になったのは、SNSの影響が大きいと思います。知り合い程度の同級生らが「俺は転職した」などと投稿するのを見聞きするからです。

 その中で、自分より優秀だと思っていた同級生がスタートアップやベンチャーに行くということを知り、「俺の人生これでいいのか」と思い始めるわけです。

転職が転職を呼ぶわけですね。年齢別に考えた時、40~50代がスタートアップに行くこともあり得るのでしょうか。

中嶋氏:大企業にいると、会社生活のある時点でその会社における出世レースに決着が付き、生涯の所得が大体わかります。しかし、昨今の経済状況を考えると、退職金や年金を十分にもらえるのかという不安はある。そこで転職を考える、というパターンがあります。

大企業で出世できなくても、スタートアップで活躍できる可能性はあるのでしょうか。

中嶋氏:IoT(モノのインターネット)の進展で、ソフトとハードの要素が複合的に絡み合っている製品や事業を展開しようとするスタートアップは多いですよね。例えば、スマートロック(ITを活用したカギ)です。制御するソフトの開発には詳しいが、錠前については素人という起業家はいます。カギの会社一筋だった人でも、そういうスタートアップに転職すれば、長年培ってきた技術や知識を役立てることができるでしょう。

 IoTやセキュリティ、AI(人工知能)、自動車、通信販売など様々な分野で、大企業出身者は既存産業とスタートアップをつなぐ役割を果たせます。

そもそも転職先として、スタートアップと大企業の大きな違いはあるのでしょうか。

中嶋氏:大企業もつぶれるリスクがあります。また、会社は続いても自分の居場所がなくなるリスクもあります。転職先としての大企業とスタートアップの違いは、危機が起きた場合、大企業では自分ひとりの力ではどうにも変えられないが、相対的に一人ひとりの行動の影響力が大きいスタートアップでは、自分で何とか状況を変えられる可能性が大きいことだと思います。

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