松本氏:価格比較サイトの知名度が上がり、取引量が増えるなかで顧客から「安いけど印刷品質がひどかった」という意見も出てきました。サイトの運営だけでは、品質保証はできません。比較だけでなく、自分たちの責任でサービスを提供していくしかないとの思いから、現在のビジネスモデルが誕生しました。

サービスを開始する際に、印刷会社からの反発はなかったのでしょうか。

松本氏:ありましたね。広告を出してくれている印刷会社に話を持っていくと、応援してくれる会社と「競合になる」と反発する会社はありましたよ。

そうした中でうまくいった秘訣は何になりますか。

松本氏:う~ん……。積み重ねですね。アイデアだけでは絶対にうまくいかなかったと思います。プラットフォームとして協力いただく印刷会社に「価値」、言い方を変えると「儲かる場」を提供する。そして顧客には早く安く品質の良い印刷物を提供する。極めてシンプルですが、印刷会社と顧客の双方が満足してくれるサービスを時間をかけて磨き上げていったことが秘訣でしょうか。

 協力を打診した印刷会社には、自社のデメリットになるのであれば参画しないという選択肢もあったと思います。価格に関しては、我々は提携している印刷会社が儲かるように努力しました。単純に多重下請けをなくせば、儲かるわけではありません。紙の仕入れや生産にしっかりと入り込んで生産のノウハウを作り込んでいきました。

 我々が提携している印刷会社に求める水準は高いですが、両社で目標を設定して改善を積み重ねています。こういった一つひとつの積み重ねで成功したと思います。繰り返しになりますが、アイデアだけでは成功しません。アイデアをきちんと磨き切ることで事業は拡大していくと思います。

イノベーションは「掛け合わせ」

とはいえ、イノベーションを起こすアイデアそのものを生み出すのも難しそうです。

松本氏:私の中でイノベーションはひと言で言うと「掛け合わせ」だと定義しています。先ほど話した「印刷業界の中でミスミ(のビジネスモデル)をやろう」というのは、まさにそうです。

 掛け合わせでイノベーションを起こすには、様々な情報が必要です。アイデアが生まれてくる人は、情報の引き出しが多い。ある意味で教養がある人と言えるかもしれません。過去を知らないと未来は予測できませんからね。いろんなケーススタディーを知っていて、それらをどう組み合わせるかでアイデアは生まれてきます。

 そういう意味では、1つは自分の中に引き出しがあるかどうか、もう1つは引き出しにある要素をうまく分解して組み合わせられるかどうかの2つが重要な気がしますね。

新たな事業アイデアを生み出す「仕組み」は作り出せるということでしょうか。

松本氏:仕組みは作れるでしょうね。ただそれが世の中に受け入れられるかどうかはまったく別の話です。マーケティングの世界の話になってきます。消費者やサプライヤーのニーズをしっかりと捉えられるかどうかが重要です。

 私自身、新規事業を世に送り出すとだいたい外れます。そのため、世の中に受け入れられるように修正していきます。重要なのは新規事業が外れることではなく、そこから修正してヒットにつなげられるかどうか。アイデアを出すことではなくブラッシュアップし続けることに価値があると考えます。

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