日本郵便はアイデアや技術をもつスタートアップとの提携で、この課題を解決しようとしている。募集テーマはほかに「郵便配達エリアの最適化」「郵便局間の運送便ダイヤの最適化」「国際郵便等のオペレーションの効率化」と、「郵便・物流のリソースを活用した新サービス」がある。
選ばれたスタートアップ企業は、1日約3000万カ所の郵便配達先、約14万台の車両、約18万本の郵便ポストなど日本郵便の物流ネットワークの一部を利用した実証実験ができる。このほか、日本郵便とサムライインキュベートが出資を検討する。サムライインキュベートは1社1000万円を想定している。
日常の仕事に埋没しているとアイデアが出ない
サムライインキュベートと組んで日本郵便が提携スタートアップを募集するのは今回が2回目。昨年の第1回で最優秀に選ばれたオプティマインド(名古屋市)とは既に、同社のAI技術を使ってゆうパックの配達ルート選定の実証実験を始めている。
企業や研究機関など、社外の知見を利用して新たな事業を生み出す「オープンイノベーション」に取り組む企業は多い。日本郵便も、「最重要案件」と横山社長が公言するほど、力を入れていることをアピールする。採択した後の実証実験などの実行段階でも役員ほか、「(日本郵便の)関連部署のエース級社員」(サムライインキュベートの榊原健太郎社長)らがメンターとしてかかわる。
横山社長は昨年のプログラムを受け、「なんでうちからはアイデアが出てこないんだと思った」と感想を漏らす。その理由として、「日常の仕事に埋没していると、前進するための創意工夫が出にくくなる」と、自社の状況を分析する。いわゆる、大企業病ともいえる状況にあるようだ。
だが、サムライインキュベートの榊原氏は、「海外の通販サイト事業者が事業を広げる中、日本郵便は経営層と現場で危機感が共有されている。それが(オープンイノベーションが成功する上では)大きい」と指摘する。
日本郵便が、こうした「オープンイノベーション」の取り組みでどこまで変われるかは未知数だ。大企業がイノベーションを起こすには、経営層のコミットメントが必須とされる。様々な“レガシー”を抱える日本郵便が、スタートアップがもたらすイノベーションの芽をどこまで本気で育てられるか。オープンイノベーションの実現に奔走する福井氏は「前回より具体的にテーマを設定した。マッチするスタートアップとどんな連携ができるか楽しみ」と話す。
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