結果、9月に東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定された。1年間の改善期間中に内部管理体制の改善が見られなければ上場廃止の恐れもある。記事が掲載された頃には、金融庁から課徴金が課されることも確実視されていた。こうした状況でウエスチングハウスの減損問題が発覚したら、規制当局がどんな判断を下すか予想がつかない。

 歴代の東芝経営陣はウエスチングハウスの苦境をひた隠しにしてきた。いったんパンドラの箱が開くと、神話さながらにあらゆる災いが噴き出し、制御不能な状況に陥りかねないからだ。そこでウエスチングハウス単体の減損処理が東芝の連結決算に影響しないよう、会計上の「トリック」を使った。不正会計が発覚した後も隠蔽を続けることで、嵐が過ぎ去るのを待っていたのだろう。

 しかし、東芝の思い通りにはいかなかった。日経ビジネスのスクープを受けて東証が動いたからだ。東証の幹部は取材に対しこう述べた。

 ウエスチングハウス単体で巨額の減損があったのなら、今までの説明とは食い違う。企業ぐるみの隠蔽と言わざるを得ない。上場企業として投資家への説明責任を十分果たしていない。

 東証は東芝に対し、報道された事実が正しいとすれば減損規模が大きすぎ、「適時開示基準」に抵触していると指摘した。特設注意市場銘柄に指定されている東芝にとって、東証の言うことは絶対だ。東芝は11月17日に「のれんの減損について」と題するプレスリリースを配信し、過ちを認めざるを得ない状況に追い込まれた。

不適切会計ではない、「粉飾決算」だ

 日経ビジネスは2015年8月以降、誌面やウェブサイトを通じて東芝関係者からの内部告発を募っていた。日本を代表する企業がなぜ不正に手を染め、長年にわたり明るみに出なかったのか。そしてなぜ、一部の人間に責任を転嫁するだけで幕が閉じられようとしているのか。その問題の根源を知りたかったからだ。

(『東芝 粉飾の原点』序章より 。後編は7月15日に公開予定)

 7年間で2000億円以上の利益を水増ししていた東芝。巨額の不正が長期にわたって露見しなかったのはなぜなのか。何が歴代トップを隠蔽に駆り立てたのか――。

 日経ビジネスが報道してきた東芝関連記事に新たな事実を追加した書籍、『東芝 粉飾の原点』が7月15日に発売されます。勇気ある社員の証言や膨大な内部資料を基に、東芝が抱える“闇”に切り込む一冊です。

≪書籍の主な内容≫
【序章】 こじ開けたパンドラの箱
【第1章】 不正の根源、パワハラ地獄
【第2章】 まやかしの第三者委員会
【第3章】 引き継がれた旧体制
【第4章】 社員が明かす不正の手口
【第5章】 原点はウエスチングハウス
【第6章】 減損を回避したトリック
【第7章】 歴代3社長提訴の欺瞞
【第8章】 「著しく不当」だった監査法人
【第9章】 迫る債務超過、激化するリストラ
【第10章】 視界不良の「新生」東芝


情報をお寄せください。東芝関係者以外からも広く求めています。

 東芝、三菱自動車、東洋ゴム…
 企業の不正事件が後を絶ちません。ひとたび不祥事が発覚すれば、社長が謝罪し、お飾りの再発防止策が発表され、事件は幕を閉じようとします。ただ、それで問題は解決したのでしょうか。
 原因を究明しない限り、組織の再生はありません。「日経ビジネス」では、読者の皆様からの情報をお待ちしています。

 アクセス先 http://nkbp.jp/nbpost

 取材源の秘匿は報道の鉄則です。そのため所属機関のパソコンおよび支給された携帯電話などからアクセスするのはおやめください。

 郵送でも情報をお受けします。
〒108-8646 東京都港区白金1-17-3
日経BP社「日経ビジネス」編集部「企業不正取材班」
※送られた資料は返却しません。あらかじめご了承ください。