株主の1人の質問は「なぜ優良事業を売却するのか。すでにメディカル事業も売却した。高く売れるとこから売っている印象を受ける。一方で、優良部門を抱えたまま上場廃止になって、再上場を目指すこともできた。『虎の子』を売るのか残すのか、2つの道があったはずなのに売却を選ぶ理由がわからない。日本航空(JAL)や西武鉄道(現西武ホールディングス)は上場廃止したあとに企業価値を高めたのになぜか」と問いただした。
これに対し綱川社長は「(最先端の)3次元メモリーの研究開発費用に加えて、生産面でも年間数千億円の設備投資がかかる。今の状況では投資を続けられない。財務基盤を回復し、社会インフラを軸に社会に貢献していく方針なのでご理解をいただきたい」と説明した。
また別の株主からは「(協業先の)米ウエスタンデジタル(WD)が邪魔しているように見える。マスコミはもめて面白いかもしれないが、我々株主は困る。バックに米国政府の影もちらついている」との質問が飛んだ。
半導体を率いる成毛副社長は、「WDは1年前に(競合先の)サンディスクを買収し、その後、合弁会社を運営している。表に出てくるのは敵対的な情報だが、一つ言っておきたい。日常のオペレーションは共同で実施している。一方で事業売却には反対姿勢を打ち出している。経営に参画したいという。歩み寄るところは歩み寄り、一日も早く解決したい」とあくまでも関係回復に努める姿勢を強調した。
また別の株主からは「メモリーの売却事業について、韓国メーカーが入っているのに技術流出の懸念がないと、なぜ言えるのか」との質問が飛び、成毛副社長が「SKハイニックスは米ベインキャピタルへの融資ということで詰めている。議決権を持たないので名前は入っていない」と説明に追われた。
成毛副社長の「眼帯」が会場を和ます
ただ厳しい質問が飛ぶ中で会場を和ませたのもメモリー売却に関する、ある株主の質問だ。「毎年いくつかの株主総会に出ているが、金属探知機の検査を受けたのは始めてだ。もしかして脅迫状でも届いたのか。先程から説明に立っている成毛副社長が眼帯をしている。そんなことはないと思うが、暴漢に襲われて傷を負ったのか。メモリー売却で忙しいからだと思うが心配だ」
これには議長である綱川社長も笑いをこらえられない様子で、会場からも苦笑が漏れた。金属探知機については法務担当の櫻井直哉上席常務が「テレビでも報道され多数の株主の方が訪れる。皆様に何かあってはならないということで実施した」と説明。眼帯については成毛副社長自身が「先週日曜日に外で掃除をした時に、こけてまぶたのところに傷がついた。目は大丈夫だが見てくれが悪い(ので着けている)」と説明する一幕もあった。
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