PwCあらたは対立の挙げ句、今年4月初めから1カ月間、東芝の監査から離れました。その後戻りましたが、今期も継続するか予断を許さないのではないでしょうか。

八田:それは何とも言えませんが、PwCあらたが監査継続をしないとなると、次にどこがやれるかという問題が起きます。新日本は前任だし、監査法人トーマツは東芝の監査委員長がかつて包括代表を務めたことがあるなど、独立性の問題があります。あずさ監査法人も同様の難点があると言われています。

 すると準大手ということになるかもしれませんが、マンパワーの点などで容易ではありません。どうしても避けて欲しいのは、監査難民を作るということです。それは監査業界にとって信頼性に関わる重大な問題にもなります。業界全体でしっかり考えて欲しいと思っています。

会計士協会は意見発信すべきだ

日本公認会計士協会はこの問題について、何の動きも見せません。会員の指導機関としてどうなのでしょうか。

八田:その通りですね。会計士協会は、協会会員の指導監督が役割なのですから、もっと積極的に東芝やPwCあらたから事情を聞くなり、(監査意見の表明のあり方などについて)協会としての考え方を意見発信するなり、してもよかったのではないかと思います。

 対立が続いて、監査の引き受け手もなくなれば、最終的に東芝が上場廃止になる可能性もあります。それだけ大きな問題なのだから社会に対する説明責任もあるはず。その辺りをしっかり危機感を持って考えるべきだと思います。

富士フイルム子会社の富士ゼロックスでも不正会計が発覚しました。会計不祥事が続きます。日本企業の内部統制はおかしくなっているようです。

八田:21世紀になって発覚した大きな会計不祥事は大半が内部告発によるものです。2000年代初めに米国で発覚したエンロンやワールドコムなどもそうだし、オリンパスや東芝も同様でした。会社が主体的にガバナンスを利かせて不正を発見したりしたものは、残念ながらほとんどありません。仮にあっても、表には出てこないという面もあるかもしれませんが。

 今は社会の人々の考えや個人の感じ方も、不正をほおかむりしたり、見て見ぬふりをするというようになっていません。そこはかなり変わってきたと思います。大事なのはそれを受け止める会社側です。富士フイルムも2016年には不正の端緒をつかみながら突っ込んだ調査をしていないようです。

 同社に限らずですが、不正の臭いでもあったら、納得できるまで徹底的に調べ、改善する体制を作らなければ、こうした問題は後を絶ちません。監査法人と企業との間に溝が生じるのは、そうしたケースです。企業側も体制を徹底して再構築する必要がありますね。

 米原子力事業の巨額損失、大黒柱のフラッシュメモリー事業の“売却”……。かつての名門企業はなぜ、崩壊の危機に瀕してしまったのでしょうか。

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【第1章】 不正の根源、パワハラ地獄
【第2章】 まやかしの第三者委員会
【第3章】 引き継がれた旧体制
【第4章】 社員が明かす不正の手口
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【第7章】 歴代3社長提訴の欺瞞
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