米ウエスチングハウス(WH)の減損と、パソコン事業におけるバイセル取引。東芝の経営危機を深刻化させた2つの問題に、デロイトトーマツグループが深く関与していたことが、日経ビジネスの取材で明らかになった。
本誌は今回、社内システムや電子メールの記録など様々な内部資料を入手。東芝の現役社員に加え、複数のデロイトOBから証言を得た。その結果、現在のデロイトトーマツグループCEO(最高経営責任者)である小川陽一郎氏を含む数十人の幹部の関与が新たに判明した。
資料によると、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー(DTFA)は2011年以降、「のれんの減損に関する相談業務」や「WEC減損テスト相談業務」など複数の「FAS業務」を東芝から受託している。FASは「ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス」の略称で、財務に関する相談を意味する。WECとは、東芝社内におけるWHの呼称だ。

東芝は本誌が2015年に指摘するまで、WHが減損処理を実施して赤字に転落していた事実を隠蔽していた(スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽)。一方で、社外に対しては原子力事業は「好調」だと、実態とは異なる説明を続けてきた。デロイトがFAS業務を提供していたのは、ちょうどその時期に該当する。
資料には数十人のデロイト幹部が実名で登場する。WHに関する契約では小川氏が「LCSP」として関与している。「リード・クライアント・サービス・パートナー」を意味し、デロイトのOBによると「案件の中身を知るべき立場」だという。
デロイトはグループ内に、DTFAなどのコンサルティング会社と監査法人を抱えている。FAS契約が結ばれていた時期、小川氏は監査法人トーマツの経営会議メンバーだった。本誌は小川氏に取材を申し入れたが、「守秘義務があるため、個別案件に関する取材には対応できない」との返答だった。
東芝経営陣はデロイトに対して何を求め、デロイトはどんな期待に応えていったのか。日経ビジネス6月26日号特集「東芝の“遺言” 知識は失敗より学ぶ」では、内部資料を基に両社の関係を詳しく解説している。
米原子力事業の巨額損失、大黒柱のフラッシュメモリー事業の“売却”……。かつての名門企業はなぜ、崩壊の危機に瀕してしまったのでしょうか。
勇気ある社員の証言や膨大な内部資料を基に、東芝が抱える“闇”に切り込んだ『東芝 粉飾の原点』。東芝の現状を理解するのに必須の一冊です。

≪書籍の主な内容≫
【序章】 こじ開けたパンドラの箱
【第1章】 不正の根源、パワハラ地獄
【第2章】 まやかしの第三者委員会
【第3章】 引き継がれた旧体制
【第4章】 社員が明かす不正の手口
【第5章】 原点はウエスチングハウス
【第6章】 減損を回避したトリック
【第7章】 歴代3社長提訴の欺瞞
【第8章】 「著しく不当」だった監査法人
【第9章】 迫る債務超過、激化するリストラ
【第10章】 視界不良の「新生」東芝
東芝、三菱自動車、東洋ゴム…
企業の不正事件が後を絶ちません。ひとたび不祥事が発覚すれば、社長が謝罪し、お飾りの再発防止策が発表され、事件は幕を閉じようとします。ただ、それで問題は解決したのでしょうか。
原因を究明しない限り、組織の再生はありません。「日経ビジネス」では、読者の皆様からの情報をお待ちしています。
アクセス先 http://nkbp.jp/nbpost
取材源の秘匿は報道の鉄則です。そのため所属機関のパソコンおよび支給された携帯電話などからアクセスするのはおやめください。
郵送でも情報をお受けします。
〒108-8646 東京都港区白金1-17-3
日経BP社「日経ビジネス」編集部「企業不正取材班」
※送られた資料は返却しません。あらかじめご了承ください。
Powered by リゾーム?