2つ目のリスクは、スポンサーの選定だ。東芝は3月29日時点でWH株の87%を保有しており、かねて出資比率の引き下げを検討してきた。チャプター11を申請したことに伴い「WHの執行部がスポンサー案を選定し、裁判所が判断することになる」(畠澤執行役常務)という。

 東芝とWHは韓国電力公社グループに支援を打診したとされるが、「出資に伴うリスクが明らかにならない限り、韓国電力は様子見を続けるだろう」と、原子力産業に詳しい関係者は指摘する。

債務超過の穴埋めには「2兆円」が目安

 逆に、東芝の持ち株比率が高まる恐れもある。2017年10月以降、WH株の10%を保有するカザフスタンの国有企業・カザトムプロムが「プットオプション」を行使できるようになる。行使されると東芝は株式の買い取りを余儀なくされ、連結株主資本が約1000億円目減りすると試算されている。

 3つ目は、分社するフラッシュメモリー事業の売却条件である。東芝は3月29日で1次入札を締め切り、今後、出資者選びを本格化する。

 前述の通り、3月末の債務超過額は6200億円となる見通しだ。これを穴埋めしたうえで一定の株主資本を確保するには、事業売却を通じて少なくとも1兆円以上の「譲渡益」を確保することが求められる。

 4月1日に発足する「東芝メモリ」の純資産額は約6000億円と見込まれ、税金の支払いなども考慮する必要がある。2兆円規模で売却できるかが、一つの目安になりそうだ。

 一方、フラッシュメモリーは安全保障に深く関わることから、政府が技術流出に懸念を示している。外為法による事前審査などを通じて中国企業や台湾企業の出資意欲が減退すれば、結果として、東芝の期待通りの値段で売れなくなる可能性も出てくる。

 綱川社長は3月29日の会見で「経営トップとして責任を非常に大きく感じている。問題の収拾と改善に全力で取り組みたい」と述べた。30日には、フラッシュメモリー事業の分社を決議するための臨時株主総会が予定されている。

 米原子力事業の巨額損失、大黒柱のフラッシュメモリー事業の“売却”……。かつての名門企業はなぜ、崩壊の危機に瀕してしまったのでしょうか。

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【序章】 こじ開けたパンドラの箱
【第1章】 不正の根源、パワハラ地獄
【第2章】 まやかしの第三者委員会
【第3章】 引き継がれた旧体制
【第4章】 社員が明かす不正の手口
【第5章】 原点はウエスチングハウス
【第6章】 減損を回避したトリック
【第7章】 歴代3社長提訴の欺瞞
【第8章】 「著しく不当」だった監査法人
【第9章】 迫る債務超過、激化するリストラ
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