WHは発注元の米電力会社から「固定価格契約」で原発の建設工事を請け負っている。建設コストが一定額を超えたら、超過分は電力会社ではなくWHが支払う契約になっており、雪だるま式に損失が拡大するリスクが指摘されていた。そうした契約を見直して損失拡大に歯止めをかけるのが、WHがチャプター11を申請した背景にある。

 綱川社長は「一時的に追加損失が発生する可能性があるが、資産の売却を進めていく。新生東芝の注力事業に位置づける社会インフラ、エネルギー、電子デバイスなどで安定的に利益を拡大し、債務超過の解消と財務基盤の回復を目指していく」と発言。フラッシュメモリー事業の売却益も活用して、2018年3月期以降に業績を回復させると力を込めた。

くすぶる3つのリスク

 だが東芝の思惑通りに進むかどうかは不透明だ。リスクは大きく3つある。

 1つ目は、米国で建設中の4基の原発がスケジュール通りに完工できるかどうかだ。

 東芝とWHはチャプター11申請後も建設を続けるべく、電力会社との協議を進めている。一方で、本誌の3月13日配信記事(東芝存続には、WHの“破産”以外に道はない)で指摘したように、現場作業員のスキル不足などが原因で、工事は想定通りに進んでいない。

 米国では2020年末までに運転開始した原発については、一定の税制優遇が受けられる。海外電力調査会の試算では、「WHが建設するAP1000型の場合、1基当たり最大で11億ドル(約1250億円)の税金が控除される」という。工事の遅れが原因で税制優遇が受けられなかった場合、電力会社が東芝とWHに損害賠償を求める可能性が出てくる。

 畠澤守・執行役常務は「納期遅延で生じる負担については契約で定められている」と述べ、前述の親会社保証の範囲内で損失が限定できるとの見通しを示した。だが、再生手続きを管轄する裁判所がどう判断するかは不透明だ。東芝原子力部門の元幹部は「債権者として強い立場になる電力会社が、WHに有利な契約変更を黙って認めるかどうか」と疑問を呈する。