1つ目は、WHが「非連結化できる」との前提に立っていることだ。東芝グループにおけるWHの位置づけを見直すことで、綱川社長は「海外原子力事業のリスクを遮断する」と述べたが、具体的な道筋は示さなかった。
東芝は米国の原発建設に関し、7125億円の減損損失を計上する見込みを既に発表している。畠澤守・執行役常務は「将来のコストを保守的に見積もり、大きな数字の変更はないと考えている」と14日の記者会見でも強調したが、「損失が7000億円程度で済むと思ったら大間違いだ」とWHに駐在経験のある東芝関係者は指摘する。(東芝存続には、WHの“破産”以外に道はない)。
WHは発注元の電力会社と「固定価格契約」を結んでいる。建設工事コストが一定額を超えると、超過分は電力会社ではなくWHが支払う。東芝とWHの想定以上に工事が難航したら、数千億円規模の追加損失が発生するリスクもある。
こうした状況に置かれているWHを、誰が買ってくれるのか。相手によっては、東芝がお金を払わないとWHを引き取ってもらえない可能性もある。原子力は安全保障と直結するため、東芝の一存で売却先を決められないという事情もある。14日の会見で綱川社長は「売却についてはできるだけ早くするが、細かいことはまだ言えない」と述べるにとどめた。
WHにチャプター11(米連邦破産法11条)を適用し、原発建設から撤退するという選択肢もあり得る。東芝は親会社として約8000億円に達するWHの債務を保証しているが、ずるずると建設を続けるよりも破産法を適用して損失を確定した方が、傷は浅くて済むとの見方は根強い。麻生太郎財務大臣が3月10日の会見で言及するなど、WHの破産法申請は不可避との見方が強まっている。
WHが破産すれば、東芝の事業切り売りはさらに加速?
仮に申請して認められれば、既に傷んでいる東芝の財務基盤がさらに毀損する可能性が高い。損失額次第では、事業の切り売りを加速する必要が出てきそうだ。だが今回の「新生東芝」プランが、こうした原発の損失リスクを考慮しているとは思えない。
むしろ畠澤執行役常務は「チャプター11は東芝が決めるものではなく、WHが判断する」と発言し、記者らを煙に巻いた。東芝はWH株の90%を握る親会社だが、子会社の決定に従うのだという。

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