ところが東芝は、またも決算を発表できなかった。決算抜きの“丸腰”で2つのイベントに臨むわけにはいかない。その代わりとして3月14日にひねり出したのが、「今後の東芝の姿について」と題する再生計画だった。

東芝取締役で監査委員会の委員長も務める佐藤良二氏(左端)は決算が2度にわたって延期されたことについて「追加調査が必要」と述べた。左から2人目が原発事業を統括する畠澤守・執行役常務、3人目は平田政善・執行役専務)、右端は綱川社長
東芝取締役で監査委員会の委員長も務める佐藤良二氏(左端)は決算が2度にわたって延期されたことについて「追加調査が必要」と述べた。左から2人目が原発事業を統括する畠澤守・執行役常務、3人目は平田政善・執行役専務)、右端は綱川社長

 発表資料によると、WHの過半の株を売却して非連結化し「海外原子力事業のリスク遮断」を実施する。一方で、稼ぎ頭のフラッシュメモリー事業を切り離して外部資本を導入することで「債務超過の解消と財務体質強化」につなげる。そのうえで、社会インフラ部門を軸とした「新生東芝」に生まれ変わり、着実な成長を目指すとしている。

 東芝は2015年12月21日に「新生東芝アクションプラン」を発表し、粉飾決算で傷んだ企業風土の改善と構造改革の断行を表明している。だが内部統制の問題から決算発表すら満足にできず、原発をめぐって7000億円規模の損失を計上する姿からは、東芝が「新生」に失敗したことは明白だ。

 「なぜもう一度、新生東芝というキャッチフレーズを使うのか」

 記者会見で筆者が綱川社長に問いかけると、こんな答えが返ってきた。「今回のことで、東芝はまた振り出しに戻ったと考えている。新たな気持ちで新生東芝に取り組む。私にとっては再チャレンジだ」。

 何度振り出しに戻れば、東芝は新生できるのだろうか。

フラッシュメモリー抜きでも「2100億円」の利益?

 綱川社長は、フラッシュメモリーとWHを除いた“残り”を新生東芝と定義した。2019年度に売上高で4兆2000億円(16年度予想は3兆9634億円)、営業利益で2100億円(同1416億円)を目指すとしている。

 構成するのはエレベーターや空調などの「社会インフラ」に加え、火力発電や国内原子力などの「エネルギー」、そしてHDDやシステムLSIなどの「電子デバイス」など。これまでの経営方針では必ずしも主力とは位置づけられなかった事業分野だが、今後は成長が見込めるという。

 極めて“チャレンジング”な計画だが、現時点では「絵空事」と言わざるを得ない。理由は大きく2つある。

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