物流や小売りなど、物流や流通を必要としないCtoCは規模を追う必要がない。だからこそ、高付加価値な商品の少量販売を実現しやすい。薄利多売に喘いできた既存の商売にとっても活路になる可能性を秘める。

 佐賀県武雄市の宮原龍磨さんは「田舎でのんびり晴耕雨読の生活がしたい」と東京からUターン後、農家になることを決めた。親戚の手伝いでしていた田植えなどの農作業が子供のころから好きだった。

ネット上で叩き売り

 安定した収益を上げられる農業の仕組みを追い求めて行き着いたのが、土作りを必要としない発芽にんにくの水耕栽培。そして、フリマアプリ「メルカリ」でのライブコマースだった。

にんにく農家の宮原さん(左)はメルカリでもトップクラスの人気を誇る動画配信者だ(写真:生熊智)

 発芽にんにくの調理法を紹介するほか、配信中に抽選をし、地元産品をプレゼントしたりする。「通常のECサイトでは、消費者の目を引くためのサイトの作り込みにかなりの費用がかかる。一方、ライブコマースなら自分の工夫ひとつで顧客がつく」。小売店など通常の流通ルートと比べると、ライブコマースの利益率は2倍になるという。

 2日に1回のペースで3時間もの動画を配信する地道な活動が実を結び、チャンネルの登録者数は約6000人とメルカリ内でもトップクラス。1回の配信で100万円近い売上高を達成したこともある。

 宮原さんが売る発芽にんにくは20個1200円と決して安くはない。メルカリ上で宮原さんより4割も安い発芽ニンニクを出品して対抗してきた配信者もいた。だが、宮原さんは売り値を維持したままでも売り上げを落とさなかった。味や栄養価が消費者を満足させる水準にあることは当然だが、価格競争に巻き込まれない理由は他にもある。「直接消費者と関係を築けるCtoCでは、商品ではなくヒトに顧客がついてくる。価格よりも信頼という要素が消費者にとって重要になっている」と宮原さんは語る。