2018年6月17日、千葉県の幕張メッセで開催されたゲームイベント「RAGE」。サイバーエージェントグループでスマートフォン向け広告事業をするサイバーZなどが主催したこのイベントの主役は、趣味を仕事にした新世代の働き手だ。

 新作ゲームの紹介だけでなく、ゲームプレーヤー同士が競い合う「eスポーツ」の大会が開かれ、優勝者は400万円の賞金を獲得した。既にeスポーツを本業にする競技者も登場している。まさに趣味が仕事に直結した代表例だ。

 そんなeスポーツ大会が開催されるイベントで、異色のステージが幕を開けた。壇上にはゲーム画面を映していた巨大なスクリーンのほかに、5枚の透明スクリーンが設置されている。人気ゲームのプロモーション動画の再生が終わると、ステージのスクリーンに映し出されたのは7人のCGでできたキャラクターだ。集まったファンに声をかけ、手を振るキャラクターに、ファンたちは熱烈な声援をあげた。

Vチューバーが共演したゲームイベント。左がねこます氏のキャラクター。(写真:室川イサオ)
Vチューバーが共演したゲームイベント。左がねこます氏のキャラクター。(写真:室川イサオ)

 ステージに“出演”したのはバーチャルユーチューバー、通称Vチューバーたちだ。架空のキャラクターの外観を操って動画を作り、配信する。いわばユーチューバーの架空キャラクター版といえる。舞台裏では人の動作を読み取るモーションキャプチャー装置などを駆使し、Vチューバーたちがキャラクターを操りながら声を加えていた。普段は個別に動画を配信しているが、ステージでは共演してゲームの腕を競っていた。

Vチューバ―とユーチューバ―の違い

 イベントに招待されステージに出演したVチューバーの一人「バーチャルのじゃロリ狐娘ユーチューバーおじさん」の別称で知られるねこます氏は「Unity(3Dゲーム開発用ソフト)の勉強をしたくてVチューバーを始めた」と動機を話す。Vチューバーとしての活動は「趣味というのが一番近い。仕事だと思っていたら、できないと思う」。

 同氏が配信する動画は、美少女のキャラクターが野太い男性の声で話すギャップが話題をよび、ユーチューブのチャンネル登録数は6月19日時点で28万人に及んでいる。

 従来のユーチューバーがキャラクターに置き換わっただけ。そう考えるのは早計だ。サイバーエージェントでVチューバーの支援事業を統括する兵頭陽氏は「歌やゲーム、コスプレ、あるいは歴史や物理演算まで、特定の趣味に突き抜けた知識や技術を生かして動画を配信するVチューバーは、特に人気が高い。一般受けするネタを動画にしていたユーチューバーとの大きな違いだ」と指摘する。

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