少子高齢化と、それに伴う人手不足といった日本が直面する社会課題も当然、新職業を生む要因になる。
転職サイト運営のビズリーチ(東京・渋谷)によると、工場や物流拠点の省人化を担う「無人化エンジニア」らロボット工学関連の求人数は、2015年から17年の間に5.3倍に急増。物流関連企業がロボットの開発部長を最高年収1900万円で募集する例もある。
逆に、自動化が難しい高度な業務を担う人材を求める企業が頼りにするのが、経営戦略に即して国内外で有能人材を採用する「HRビジネスパートナー」。その求人数は同期間に2.7倍になった。最高提示年収は2000万円だ。
M&A(合併・買収)などで後継者不足の企業を救う「事業承継請負人」の求人も同期間で5.0倍になった。2500万~3000万円の最高年収を提示する例もある。
メジャーデビューはもういらない
「趣味を仕事にできたら最高なのに」。誰もが一度は考えたことがあるであろうこんな将来設計も、実現のハードルが下がってきている。
「独特の世界観を持つアーティストほど、レーベルのような組織に頼らず活動できる時代になってきた」。音楽配信アプリを手掛けるナナミュージック(東京・目黒)の文原明臣CEOはこう話す。
一般の個人が趣味で創作した曲をアップロードできる同社のアプリ「nana」は、2018年4月時点で世界累計600万ダウンロードを記録している。nanaを利用する音楽家とファンとのつながりはオンライン上にとどまらない。nana上でファンを集め、有料のライブイベントを告知するユーザーは多く、nanaでのメンバー募集やオーディションなどを通じてアニメの主題歌やCMの歌い手に選ばれる例もある。「レーベルを通してメジャーデビューをしなくてもメジャー(有名)になれる」(文原CEO)
従来はCDの製作や出荷、宣伝などに多くの人員とコストがかかるため、メジャーレーベルからデビューを目指すことが音楽業界で成功する道だった。しかし、レーベルでは物流、販売店など多くの中間産業を通す必要がある。そのため、CDの販売で作曲家や演奏者に渡される収入は売り上げの数%程度といわれている。また、中間産業は規模の経済を生かさなければ黒字を確保できない。必然、ある程度大きな市場を狙わなければならなくなる。
一方、nanaのような個人と個人を繋げるCtoCの仕組みは、音楽の提供者とファンを直結し、中間産業を必要としない。そのため、売り上げの大半が作曲や演奏者の収入につながる。5000人のファンから1000円程度の売上が得られれば、メジャーレーベルからCDを10万枚売るのと同程度の収入になるわけだ。さらに、規模を追わなくていいため、よりマニアックな顧客層を開拓しやすい。「どれだけファンがいるかということと、音楽で生計を立てられるかは相関性がなくなってきている。むしろ、少人数に深く刺さる曲を作れる方が仕事になりやすい」(文原CEO)
CtoC市場のプラットフォームは様々なネットサービス業者が参入し、収益を生む方法も多様化している。オンライン連載の第2回では、こうしたプラットフォームをフルに生かす「趣味長者」を紹介する。
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