それは、先ほどの「過保護」という言葉もありましたけど、スタートアップへの投資についても「気前がいい」ということではないわけですか。

片桐:まったくないですよ。収支が合わないといけないというのがやっぱりあるからね。例えば、上場してずっと赤字の会社とかありますけど、うちだったらあんなままで放っておかないよねと思う。
だから、(1月に買収した音楽共有アプリの)nana music(東京都渋谷区)とかは収支を合わせられるし、(同じく1月に買収した写真保存アプリの)ピックアップ(東京都港区)は、彼らの既存事業に加えて、さらに可能性のある事業を作っていけるだろうという目算がある。そこは厳しく見ていますよ。
その目利きについては、片桐さんはどのようなスタンスで臨まれているのですか。
片桐:まず、本当にいい会社はほとんどないですよ。色々見てはいますけど、マジでないですよ。誰もが認める伸びている会社って、メルカリ(東京都港区)とかはあるけど、他にどこがあるのって。どこかありますか?
スタートアップでは往々にして、事業が急成長しているというアピールは皆さんしますよね。
片桐:するじゃないですか。「売り上げは1年前の10倍です」って。じゃあ具体的にいくらなんだって、みんな公表しない。結構ウソも多いしね。動画の再生回数とかでも、今は海外から買ってこれるし、そういう噂ってどうしても漏れ出てきますよね。すごい人気の動画ですって言われて、実際見てみたらこんなの誰が見るんだよって(笑)。
CVC担当者は大学生と飲みまくれ
そうすると、そこの見分け方というのは。
片桐:僕はピクシブの時からずっと採用をやっていましたけど、起業家でも技術者でもいい人材って、だいたい見た瞬間にすごいって分かるんですよ。たまに会ってないうちに成長する人もいるけど、昔からすごい人はすごいんです。
僕が大学時代の話ですが、当時映像とかウェブの仕事をしていて、当時高校生だった「RADWIMPS」(編集部注:大ヒット映画「君の名は。」の主題歌「前前前世」を唄う人気ロックバンド)に会ったことがあるんです。色々なバンドと一緒に仕事をしましたけど、彼らは僕が会った時からもう輝いていたんですよね。当時はインディーズのアルバムを出したばっかりだったと思うけど、圧倒的に格好良かったですよね。別に僕が彼らの曲をすごく好きというわけじゃないんだけど(笑)。
だから、イケてる人たちは初めからイケてるんです。ただ、生意気なやつはめちゃくちゃ多い。本当に生意気だな、ムカつくな年下のくせにとか思うけど、でもすごく優秀だとかね。僕はそういう人の「コレクター」だから、よく分かるんです。
片桐社長と創業者の亀山会長の関係性にも関心が集まっています。例えば、M&Aなどについて、どのような分担をされているのですか。
片桐:亀山とはもちろん話しますよ。意見も聞きますし。「あいつはダメだよ」とか、「俺は良くないと思うな」とかよく言われますよ。これまで買収しようと思ってやめたことはないですが、たまたま会話の中で、「あいつはダメだよね」って言われて、僕も「別に僕は仲良くないですけどね」と返事したり、「あれは詐欺顔だ」「確かに詐欺顔ですね」ってやりとりしたり。亀山の方が僕より商売人なので、収支に関してもずっと厳しいですよね。
最後に、最近大手企業のCVCが増える中で、担当者が苦労しているという話もよく聞きます。片桐さんから目利きについてアドバイスするとすれば、どのようなものでしょうか。
片桐:そうですね。とにかく、CVCの担当者になったら、大学生と飲み会をしまくればいいと思いますよ。そこでとにかく、イケている学生に出会ったら、「起業するなら500万円出すよ」と言ってあげればいい。慶応大学なんかいいと思いますね。大学の前に居酒屋とかカフェを出して、そういう場を自分で作るとか、面白いと思いますけどね(笑)
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