天然記念物は「過保護」で守れ
DMMでは片桐さんの社長就任以降、以前にも増して積極的にM&A(合併・買収)を実施されていますね。
片桐:DMMに関しては、ネット関連の事業は多いけど、それだけに重きを置いていません。ベルギーのサッカーチームに出資してみたり、ベトナムでドローンを使った農薬散布の実験をしてみたり。チャンスがある事業には何でも行くというスタイルです。
ただ、DMMはこれまでのネット事業はEC(電子商取引)が中心だったけど、僕は今後、もっとネットの技術や製品が前に出たサービスをやっていきたいと思っています。例えばトレンドっぽいものとか、仮想通貨も面白いと思いますね。DMMの未来を考えたら、中から生み出しにくいものは外から取ってくる方が間違いなく早いという考え方です。
M&Aでは何を重視されているのですか。
片桐:M&Aで一番重要なのは、起業家との人間関係だと思いますよ。プロダクトがすごく盛り上がっていても、経営者がいなくなったらもう伸びる余地がないことも多い。何年間かは一緒に仕事をして、きちんとその事業を成長させるとか、もしくは新しい事業を立ち上げられるとか、そうしたことが見えないと難しいですよね。
あと、天然記念物ということでいうと、そういう存在ってすぐに病気とかで死んじゃうような生物だと思うんですよ。起業家もそう。経営者ってすごくストロングなイメージがあるかもしれないけど、実際は繊細で、すぐにダメになっちゃう。そういう起業家は「過保護」にしないとダメだと思っています。
その文脈でいうと、DMMのM&Aは完全にグループ内に取り込んで、保護するという考え方ですよね。一部出資というケースはないんですか。
片桐:ないですね。一部出資がないのは我々が株式市場にいないからという理由もあります。出資先が成長して、そこの株式を売ったらこれだけの売却益が出ました、それが株価に反映されましたという、市場を意識したような投資活動をやる必要がないですから。
でも、我々は株式を売却して利益を上げたいわけではなくて、あくまで事業で儲けることが大事。一部出資の場合、事業的な面白さはないです。それは亀山が思ってきたことでもあって、DMMとしては今まで一部出資はやったことがないですよね。
逆に、DMMが保護することによって、スタートアップが得られるメリットとは、どのようなものでしょうか。
片桐:それは先ほどの話に戻りますが、そもそも事業を立ち上げて伸ばすことに、昔よりすごく金がかかるようになっている。何年も地道にやって最終的に勝つみたいなビジネスモデルは難しいわけです。グーグルができることと、スタートアップができることは全く違うじゃないですか。資金自体がインフラになっている。
だから、DMMとしては彼らをグループに入れて、リソースを使って成長してもらうことが大事だと考えています。ぶっちゃけた話、スタートアップの側にしても、僕や亀山が変なアドバイスをしても嫌なだけだと思うんですよ。だから、僕がやるより任せた方がいいサービスやプロダクトは、信頼に基づいて任せる。全力を尽くしてもらうことはもちろん大事ですが。
本当にいい会社はほとんどない
失礼な言い方ですが、DMMは「海の物とも山の物ともつかぬ」ものに対して大枚をはたいているというイメージを持たれることも多いと思うのですが。
片桐:(モノづくりベンチャーの支援事業)「DMM.make」とかね。
そこは、確実に金を生む投資とそうでないものの切り分けをされているんですか。
片桐:ちなみに言っておくと、全部儲かると思ってやっているからね(笑)。ポイントはね、訳が分からないものに張っていると思われているけど、「あ、これはいける」とは思っているんですよ、商売的にも。ただ、事業を始めるスピードも、止めるスピードもすごく速いですよ。あと、僕はDMMに来てびっくりしたけど、新幹線はグリーン車に乗れないわ、経費も1円も使えないわで。色々な面について、コスト管理は本当に厳しいです。
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