サクラクレパスはシャープ出身の釆山和弘氏(左)、廣瀬泰治氏(右)など外部人材も積極的に登用する(写真:菅野 勝男)

社長との距離が近い

 もう1社のサクラクレパスは1921年に設立。1937年に西村齊次郎氏が社長に就任し、以来、西村家が歴代社長を務めている。現社長の西村彦四郎氏は、齊次郎から数えて4代目だ。
 同社は創業初期からの描画材料「クレパス」のほか、色鉛筆「クーピーペンシル」、半透明の「マット水彩絵具」など文具を中心に革新的な商品開発を続けてきた。国花のサクラの名称と図柄を製品に冠すことで、最高品質の製品を提供して教育・文化に貢献し、国の繁栄とともに歩むことを企業理念に掲げる。
 シャープ出身で、現在はサクラクレパスに務める釆山和弘氏と廣瀬泰治氏は入社後、「社長との距離の近さに驚いた」と口をそろえる。商品開発の進捗といった細かな話題でも社長と気軽に話す機会が多い。廣瀬氏は「『世にない商品を出そう』という意識が根底にあり、社員についても良い点を伸ばそうとする風土が魅力的」と話す。
 現在、釆山氏は工業用製品のプラズマインジケータを扱うPI事業部に所属。入社後、当初は社内の研究所で製品の研究開発に携わっていたが、「自分で開発した製品を売ってこいと言われて現在の部署に来た」と笑う。これも顧客と直に接することでニーズを汲み取り、次の製品開発に役立てられる点でカシオの取り組みと通じるものがある。
 廣瀬氏はボールペン「ボールサイン」シリーズの新商品で、4色ペンとシャープペンシルが一体になった細身のペンを開発。採用した外部人材もサクラクレパスの成長を支えている。
 数年単位で経営トップが交代するため短期志向になり、せっかくの発明力を生かしきれない企業が日本の競争力を削いできた面は否めない。同族企業の取り組みに学べる点は多い。