まだまだ課題はある。そもそも多くの日本企業が考えるイノベーションの定義と実状が合わなくなっていることが問題だ。日本企業の多くは自社でゼロから生み出すことをイノベーションだと信じている。模倣困難性が低くなければいけないと考えている企業が大半だ。だがそれしか「発明」でないと言うのは日本だけのようだ。

アトモフの姜京日社長。窓のない会議室でも綺麗な景色を見られる(写真撮影:菅野勝男)

 中国企業は競合他社メーカーの商品をすべて分解し、部品の製造先まで突き止め、同じ水準のものを作ってしまう。開発費がかかっていないため低価格で販売し、市場を勝ち取れる。もはや発明の定義を見直さなければ出遅れてしまうのだ。

 組み合わせで新しい事業を立ち上げたのが、アトモフ(京都市)の姜京日社長だ。会議室や部屋に綺麗な風景を映し出すための装置を発売した。価格は約7万円。アトモフが開発したのは風景を綺麗に表示させるための描画エンジンと、世界各国の風景映像を配信するシステムを用意しただけだ。27型のディスプレイといった部品は台湾など海外を中心に調達した。消費者は500円~1000円を払えば、ハワイやニュージーランドのリゾート地の映像を楽しめる。「会議室や自宅で絵画を飾るように映像を楽しんでもらいたい」(姜社長)と考えて開発に取り組んだ。

 姜社長は創業直前まで任天堂でエンジニアとして働いていた。ディスプレイ価格の下落や映像の圧縮技術の進化を感じていた。「組み合わせれば新しい事業を興せる。今しかない」と2年前に独立。米の資金調達サイト「キックスターター」で16万ドル、日本の資金調達サイト「makuake」でも約100台の注文が集まった。予約注文が入り事前に入金があったため資金を用意でき、近々出荷予定だ。

 こうした大企業を飛び出した起業家のように、いまアイデアを秘めている社員が社内にいる可能性がある。経営陣はこうした声を吸い上げる仕組みを整えれば、意外なお宝となるアイデアが眠っているかもしれない。