「確かに課題もあったと思います。今回のターゲットは若い女性、カップル、小さいお子さんのいる家族連れ、でした。このターゲット層には、確実に受け入れられたと思います。一部、評価の低い方も見受けられましたが、レジロボを用いた新しいコンセプトのお店に馴染めないこと、または大変な混雑でいつものサービスが受けられなかったことが原因で、これは期間限定でなく通常導入していけば自然と解消していく問題だと思われます」

いつ死ぬの?

 その後店舗スタッフとも話し合いが続いたが、やはりオペレーションへの負担をもっと軽減する必要があることから、さらに改良を重ねて追加で実証実験を進めたほうが良いという意見が多かった。

 咲間は本社に戻り、サプライズ・ラボのリーダー浅沢を交えて、J-ロボット社の山下と、今後の取り組みについて協議した。

 「という訳で、いろいろと改善点や店舗現場のオペレーションを整理していく必要があるようです。6カ月くらいかけて計画を練り直し、再度テストをやりたいと考えています」

 咲間の言葉を聞いた山下は、少し曇った表情で言った。

 「これからまた、6カ月ですか。あれだけ話題になってお客さんも集まったので、拡大できるかと思いましたが、6カ月後に同じように1店だけでテストですか。開発に追加費用もかかりますし…」

 咲間は、山下が全店への展開をなるべく急ぎたいのだと思い、フォローした。

 「山下さん、お気持ちは分かりますが、全店で展開させていくには、オペレーションが整わないと現場が混乱してしまいますので…」

 すると、咲間と山下のやり取りを見ていた浅沢が、突然口を開いた。

 「山下さん、バーンアウトはいつですか?」

 咲間が「バーンアウト??」とポカンとしていると、浅沢が続けた。

 「資金繰りです。現時点のキャッシュポジションと毎月のバーンレートは、どのくらいですか。資金調達なしでこのままいくと、いつ死にますか。あと、次の資金調達のタイミングやアテがあれば、教えてください」

 すると山下は、少し恥ずかしそうな顔で、打ち明け始めた。

 「バーンレートは今だいたい月300万ぐらいです。数カ月前に3000万円調達しましたが、正直なところ、あと3~4カ月くらいで次の資金調達が必要な状況です。おかげさまでロボットの引き合いも多いんですが、開発費用がかさんできています。実をいうと他社さんとも別のプロジェクトが動きはじめています。さらに追加の実証実験でエンジニアリソースを投入するとなると、もう少し早めに資金の手当てが必要になります。調達のアテは…まだありません」

 「…そうですか。とすると、半年後の再度の実証実験というのは、今のままでは難しそうですね」