その後、内川が対象ユーザーのニーズやこのアプリを使った事業のビジネスモデルと収支計画など、今後のビジネス展望を説明した。

 「……以上のように、スペースクリエイション社の最先端のAR技術と、サプライズ社のシステムや顧客基盤を掛け合わせ、あらゆる人がリフォームをもっともっと気軽に楽しめる世の中の実現を目指したいと思います」

 …と内川は締めくくった。デモを見ている時の様子などから、ほとんどの役員がこの事業に興味を持ってもらえたのではないかと内川は感じた。

役員からの想定外の突っ込み

 続いて質疑応答タイムに移ると、経営企画担当の役員が口火を切った。

 「率直に言って、これは儲からないのでは? アプリ開発やマーケティングへの投資を考えるとかなりの額の先行投資になるけれど、リフォームなんて一生に何回あるかないかぐらいだし、そもそも収益ってどうやって上げるの? ここには、利用料は基本的に無料、って書いてあるけど」

 思いもよらない反応に、内川は戸惑いつつも、反論を試みた。

「中途半端な計画に、開発投資はできない!」

 「もちろん費用はかかりますが、当初はユーザーに便利さを感じてもらうことを最優先として、マーケティング投資を抑えてベータ版の開発・リリースに集中していきたいと思います。利用料無料というのは、まずはユーザー数を最大化してその後のマネタイズを容易にするためでして…」

 すると、隣に座っていた調達・生産担当の役員が、内川に被せるようにして言った。

 「中途半端な収支計画しかないのに、開発投資に踏み切るわけにはいかないだろう。もう少しシステム要件を固めたうえで、ユーザーや代理店、取引先などの要望も入れたうえで設計したほうが良い。いくらベータ版と言っても、中途半端なものを出したら、当社のブランドと信用にキズが付きますよ」

 2人からの厳しい質問を続けざまに受けて回答に窮した内川は、「…おっしゃるとおりです。そうならないように、気をつけたいと思います」と答えるしかなかった。

 すると、小売り事業担当の役員が手を挙げた。

 「ちょっといいですか。スペースクリエイションさんの技術やそれを用いたアプリについては、非常に面白いと思いました。ただ、リフォームというのはやはり色や質感など、商品の現物を見ないと選べないというお客さんも多いと思うんです。そうすると、結局店舗に行ったりカタログやサンプルを確認することになるのでは。最初は珍しがって使ってもらえても、実用性という観点では、どのくらい広がりますかね?」

 立て続けの質問を受けてすっかり固まってしまっている内川から、黒崎がマイクを奪い取って答え始めた。